遺産分割について|遺産分割のための手続きと注意点。トラブルを防ぐためのポイント【行政書士監修】
遺産分割とは、遺産を残した人(被相続人)が遺言をせずに死亡した場合に、誰(どの相続人)が、どの遺産を受け取るかを確定させる手続きです。
相続が開始すると、被相続人の財産は、全相続人の共有・準共有状態になります。この共有・準共有状態を解消させる手続が遺産分割です。相続人同士で十分にコミュニケーションをとりながら進めていかないと、遺産の内容や家族の関係によってはトラブルに発展する可能性もあるため、注意が必要です。
この記事では、遺産分割の概要、遺産分割をおこなうための手続きや方法、遺産分割に関する注意点やよくある疑問などについてご紹介します。
目次
遺産分割の概要
遺産分割とは、遺産の共有状態を解消し、個々の財産の帰属を特定の相続人に確定して、各相続人単独での財産権の行使が可能な状態にするために行われます。
遺産分割とは、誰がどの遺産を相続するか決める手続き
簡単に言うと、遺産分割とは「被相続人が残した相続財産(遺産)を、誰が何を相続するか決める手続きです。
被相続人が遺言書を残している場合には、被相続人が作成した遺言書に従って遺産相続がおこなわれます。しかし、相続人が複数おり遺言書がない場合には、相続人同士で話し合い、協議によって、誰が何を相続するかを具体的に決めます。
これを「遺産分割協議」といい、遺産分割において最も重要な手続きともいえます。
「遺産分割は法律で決まった割合で分けるのが基準である」と考えている方が多いかと思います。しかしながら、法律では、遺産分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする、と書かれています。
つまり、法定相続分にこだわる必要はなく、合意さえできれば、どのように分けてもいいのです。
遺産分割と相続の違い
相続とは、被相続人の持っていた財産上の権利義務を、被相続人の配偶者や子など一定の身分関係にある者に承継させる制度のことを言います。相続は、遺産を引き継ぐための一連の過程を含む言葉であり、さまざまな手続きをすることによって進めていきます。
一方、遺産分割は相続を進めるための手続きのひとつです。概念としては相続の方が大きく、遺産分割は相続の一部分の手続きを示しているという関係になります。
遺産分割協議の前に確認すること
相続と遺産分割の関係を理解したところで、遺産分割が具体的にどのように進んでいくか、その流れを確認しましょう。
相続人の確定をする
相続の手続きにおいて、最初にやらなければならないことは、相続人を確定することです。まず、被相続人の生まれたときから亡くなるまでのすべての戸籍を取得する必要があります。
そこからたどって現在の法定相続人が誰なのか、半血兄弟(父母どちらか一方のみを同じくする兄弟。異母兄弟・異父兄弟)や養子などがいないか、すべて洗い出していきます。
遺言書の有無を確認する
遺産分割において最初に取り掛かるべきことは、遺言書の有無を確認することです。遺言書とは、死後に自分の財産をどう処分するか被相続人が書き記した書面のことで、一定の書式に従って記載することで法的効力を持つものとなります。
遺言書を作成する方式には、大きく分けて普通方式と特別方式の2種類があり、大抵の場合は普通方式がとられます。特別方式は事故や遭難など命の危機にあるときや、伝染病や船上で隔絶された場所にいるときに利用する方法です。
普通方式の遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が自筆で作成する遺言書です。特別な手続きは不要なため、最も手軽な遺言書の作成方法といえるでしょう。
自筆証書遺言が法的効力を持つためには、民法第968条に定められた方法によって記載する必要があり、条文では「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」とされています。
最近はパソコンで文章を作成するのが一般的になってきましたが、遺言書を作成する場合には本文は必ず自筆で作成しなければなりません。ただし、財産目録についてはパソコンによる作成が認められています。
この自筆証書遺言は、被相続人が遺言を作成したかどうかを相続人が把握していない可能性があり、発見されないまま遺産分割をしてしまうリスクがあります。遺言書作成後には、家族などに遺言書をどこに保管してあるかを伝え、確実に遺言が履行されるように注意しましょう。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証人が遺言者から遺言の内容を聞き取ったうえで作成する遺言です。
遺言書の作成にあたっては、公証人だけでなく2人の証人の立ち会いが必要です。
この公正証書遺言は、作成後に公証人役場にて保管されるため、紛失してしまう又は悪意のある人に隠される、改ざんされる、といった心配はありません。また、相続人が遺言書を発見できずに遺産分割をしてしまうといったリスクも避けられます。
さらに、後述する「検認」の手続きが不要です。公正証書遺言の作成には数万円程度の費用が発生しますが、確実に相続人に遺言内容を届けたい場合に有効な方法といえるでしょう。
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、遺言者が署名押印して封印した遺言書を公証人及び2名以上の証人の前に提出し、遺言者の遺言であることの証明を受けた遺言書です。
この場合、遺言書の作成は遺言者がおこなうため、どんな内容が記載されているかは作成者本人にしか分かりません。遺言書の内容を誰にも知られたくない場合には有効な方法です。
秘密証書遺言は自筆証書遺言と違い、自筆の署名と押印をおこなえばパソコンによる作成や代筆が認められています。ただし、公証人役場で証明を受けた遺言書は持ち帰らなければならないため、紛失してしまわないように注意しなければなりません。 なお、秘密証書遺言も自筆証書遺言と同じように、開封時には家庭裁判所で検認が必要です。
遺言書の開封時には家庭裁判所の「検認」が必要
公正証書遺言以外の遺言書を開封する際には、原則、家庭裁判所の検認が必要です。
検認とは、家庭裁判所で遺言を開封し、遺言書の形状や訂正の状態、日付、署名などがどのようになっているか、検認日現在での遺言書の内容を明確にするための手続きで、遺言書の偽造等を防止することを目的としています。
また、2020年7月10日からは法務局において自筆証書遺言書を保管する「自筆証書遺言書保管制度」が始まりました。この制度を活用すると自身で作成した遺言書を法務局で預かってもらうことができ、家庭裁判所の検認も不要です。
このように、遺言書がある場合には、原則、遺言書に記された内容に沿って相続を進めていきます。
しかし、遺言書が見つからない場合には被相続人の意思が不明なため、相続人間で遺産分割協議をすることになります。
相続財産を確認する
遺言書の有無を確認したならば、次は被相続人の全財産がどれだけあるかを確認しましょう。相続財産には預貯金や有価証券、絵画や宝飾品、不動産などが挙げられますが、負債や借金なども財産に含まれます。まずはすべての財産を洗い出し、現状を把握しましょう。
法定相続人で協議する
相続財産を確認した後、法定相続人全員で遺産分割協議をおこないます。
法定相続人とは、法律で定められた「遺産を相続する権利を持つ人」を指し、主に親や子などの親族です。このとき、一人でも遺産分割協議に参加していない人がいると協議そのものが無効となってしまうため、疎遠になっている場合でも、法定相続人には必ず参加してもらうようにしましょう。また相続人に未成年者がいる場合はその親権者や特別代理人が参加する必要があります。認知症など、判断能力が欠けている人がいれば成年後見人または特別代理人、行方不明の人がいれば不在者財産管理人が参加する必要があります。一方、相続放棄をした人は、遺産分割協議に参加する必要はありません。
遺産分割協議においては、遺産をどのように分けるか、それぞれの相続人が何を相続するかを話し合います。話し合いによって分割内容に合意できた場合には遺産分割協議書の作成に進みます。なお、遺産分割協議は必ずしも対面でおこなう必要がないため、海外など、遠方に住んでいる、仕事が忙しく日程を合わせられない、などの理由で遺産分割協議に直接参加するのが難しい相続人がいた場合には、書面でのやりとりによって協議を進めることも可能です。
遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議書とは、遺産分割協議で合意した内容について取りまとめた文書のことで、不動産の相続登記や、預貯金、有価証券等の名義変更をおこなう際に必要となります。
遺産分割協議書の内容は、一度合意すると全員の同意なくして内容を変更することができません。一度合意しても、民法上は、改めて協議して遺産分割を何度でもやり直すことはできますが、税法上は遺産分割をやり直すと、贈与税などが課されてしまうことがありますので気をつけましょう。遺産分割協議書を作成したら、相続人の全員が実印を押し、印鑑証明書を添付します。これに基づき、問題なく相続が進んでいけば、遺産分割は完了です。
遺産分割が発生しないケース
相続において、遺産分割が必ずしも発生するわけではありません。そこで、遺産分割が発生しない状況について解説していきましょう。
遺言がある場合には原則として遺産分割協議をする必要はない
具体的かつ明確な内容で不備のない有効な遺言書があり、すべての相続人がその遺言書の内容に納得している場合は、遺産分割で頭を悩ますことはありません。
相続においては基本的には被相続人の意思が優先されるためです。遺言書は被相続人の意思を表す書類であり、法律で定められた記載方法に従っていれば法的効力も持っています。そのため、遺言書があれば通常はその内容に従って遺産相続がおこなわれます。
ただし、遺言書の内容があいまいで、各相続人の解釈により複数の意味に取れるような場合や、財産の記載に漏れがあるような場合などには、やはり話し合いによる解決が必要になります。遺産分割協議をおこない、その遺産を分割します。
相続人が一人の場合は遺産分割は発生しない
戸籍謄本等を調査した結果、相続人は一名のみであると確認が取れれば、唯一の法定相続人として単独で相続することができます。
相続人がいない場合は遺産分割は発生しない
相続人がいない場合や、相続人全員が相続を放棄した場合にも遺産分割は発生しません。この場合、利害関係人からの申立てがあれば、相続財産管理人が遺産を管理します。相続財産管理人は、遺産の中から被相続人の債務を清算します。特別縁故者(相続人が存在しない場合に、家庭裁判所が相当と認めれば、相続財産の全部または一部の分与を受けることができる者)の申出があり、主張が認められれば、相続財産管理人が管理している遺産の中から、家庭裁判所がどのくらい財産を分与するか決定します。それでもなお、残った遺産があれば国庫に帰属させます。
遺産分割をおこなうための3種類の手続き
遺産分割をおこなうためには、3種類の手続きによって進められます。それぞれの手続きの概要について解説していきます。
最初におこなうのが「遺産分割協議」
被相続人が作成した遺言書がない場合には必ず相続人全員で遺産分割協議をおこないます。この協議によってそれぞれが相続する内容に合意できれば、「遺産分割協議書」を作成し、合意した内容で相続手続きを進めるのです。
遺産分割協議が成立しない限り、預金の解約、名義変更などの相続手続きを進めることはできませんので、事前に相続人の間で十分にコミュニケーションを取っておき、円滑に遺産分割を終えられるように準備しておきましょう。
協議がまとまらない場合には「遺産分割調停」を利用
生前の被相続人との関係やこれまでの相続人同士の人間関係から、必ずしもスムーズに協議が進むとは限りません。遺産の中には、不動産など、きれいに分けにくいものもあり、それぞれ相続に対する考え方も違うことからトラブルにも発展しやすく、場合によっては代理人を立てて交渉を進めるなどの対応が必要です。
相続人の中で一人でも遺産分割の内容に納得できない人がいれば、遺産分割協議は成立しません。このまま話し合いが進む見込みがなければ、相続人の一人または数人で、他の相続人全員を相手に遺産分割調停を申し立てます。遺産分割調停とは、遺産分割協議が成立しなかった場合に、家庭裁判所において調停委員の仲介のもとで遺産分割の内容に関する合意を目指す方法です。
遺産分割調停では、調停委員が各相続人から事情を聞き、それぞれの希望に最も近い形で合意できるように調整していきます。そのため、調停成立までに時間を要するケースもあります。調停の申立てから1回目の調停期日(家庭裁判所で話し合いをする日)までに1~2ヵ月ほどかかります。調停は、1〜2ヵ月に一度の頻度で複数回にわたっておこなわれるため、調停成立までは数ヵ月から1年近い期間がかかることをあらかじめ理解しておきましょう。
最終的には「遺産分割審判」に進む
遺産分割調停でも話し合いがまとまらず調停が「不成立」になった場合、調停を取り下げない限り自動的に遺産分割審判へ移行します。
遺産分割審判とは、相続人それぞれの主張を裁判官が聞き、審判によって遺産の配分を決定する分割方法です。遺産分割審判では、基本的に法定相続分を基準として、法定相続人の状況を考慮した内容で審判が下る場合が多いとされています。
遺産分割審判は、審判書が届いた日の翌日から2週間で確定します。確定した場合には、審判の内容に基づいて遺産を分割しましょう。審判の内容に反した相続がおこなわれた場合、強制執行などの手続きが取られるため、遺産分割審判の決定内容には従う必要があります。
遺産分割審判の内容が不服の場合審判の内容に不服がある場合は、審判書が届いた日の翌日から2週間以内に即時抗告することで高等裁判所での抗告審に移行し、別の裁判官による審判を受けることが可能です。なお、審判書が届いた日の翌日から2週間が経過すると審判が確定するため即時抗告ができなくなります。審判に不服がある場合はすみやかに即時抗告の手続きを始めましょう。
遺産分割を実施する場合の4つの方法
遺産分割を実施する場合、具体的に4つの方法によっておこなわれます。この章では、4つの遺産分割の方法を解説していきましょう。
遺産分割の方法1:現物分割
現物分割とは、例えば、自宅の土地・家屋は妻へ、長男は有価証券、次男は現金というように、土地や建物、車や宝飾品などの物品をそのままの状態で相続する方法です。
物品はそのままの状態が一番価値を発揮するものであるため、現物分割が遺産分割の原則的方法となっています。たとえば土地の場合には分筆が可能ですが、あまりに小さな土地では建物を建てることもできませんし、売却しようと思ったときに買い手もつきません。
現物分割はその性質上、均一に相続人に分割することが難しいため、相続人の間で取得格差が大きく、合意ができない場合には、後述する代償分割の方法を取るのが一般的です。
遺産分割の方法2:代償分割
代償分割は、土地や建物など、現物で分けると相続人間の取得格差が大きいために、このままでは遺産分割の合意が形成できない場合に用いられる方法です。
特定の相続人が土地・建物、自社株など評価額が高い財産を相続する場合、ほかの相続人との差を埋めるために、相続人が自己の財産から相当分を代わりに支払うことで相続を認めてもらう分割方法です。
遺産分割の方法3:換価分割
換価分割とは、相続財産を売却、換価した代金を分割する方法です。
法定相続分で分けたい、山林など現物では取得を希望する相続人が誰もいない、などといった場合に使われる方法です。ただし、財産の処分費用や譲渡所得税の支払い等によって相続額が減少するデメリットもあるので注意が必要です。
遺産分割の方法4:共有分割
共有分割とは、遺産の所有権を共有する分割方法です。土地や建物など分割が難しい財産である場合や、分割するために売却することに対して反対する相続人がいるなど、分け方について話し合いがつかない場合などに、やむを得ずとることが多い相続方法です。
ただし共有分割は、相続の問題を先送りしているだけです。固定資産税や修繕、維持費用を誰が払うのか、といった問題も出てきますし、分割を先送りしている間に相続人が増えるなど、分割の合意を形成することが更に難しくなり、売却や処分が困難になりやすいため、可能であれば共有分割以外の方法で遺産分割をおこなうことをおすすめします。
遺産分割でトラブルを起こさないための注意点
遺産分割は相続争いの原因になりやすいため注意が必要です。ここでは、遺産分割でトラブルを起こさないための注意点について解説していきましょう。
親子間、兄弟間で話し合える環境を作る
遺産分割で揉めてしまう家族は、往々にして生前疎遠であることが多いです。家族間で普段から話ができていれば、誰がどれほど親の面倒を見ているのか、親はどのように財産を引き継いでほしいと考えているのか、子どもの方は今後どうありたいと考えているのか、直接聞かなかったとしても何となくわかってきます。また、関係がしっかりしていれば、相続税が払えるのかなど、心配に思っていることも具体的に相談しやすくなります。
まずは、気軽に話し合える環境を作りましょう。
具体的な内容の遺言書を作成する
具体的に誰に何を相続させるか指定した遺言書を作成することで、相続人の相続手続きに掛ける手間を減らせます。遺言書によって誰に何を相続するか定められていれば遺産分割協議をする必要はなく、相続手続を速やかに始められるからです。
遺言書を作成する場合、単に「平等に分けてほしい」「3分の1ずつ分けなさい」といったぼんやりした内容ではなく、「誰に、何を相続させる」「何を遺贈する」といった具体的かつ明確な内容にすることが大切です。
先述したとおり、遺言書の作成には書式の指定がある場合があります。しかし、財産目録についてはパソコンで作成しても問題ありません。ただし、財産目録のすべてのページに署名・押印を忘れないようにしましょう。
「寄与分」と「特別受益」に注意する
「寄与分」とは被相続人の財産形成に貢献したり、被相続人の療養看護に努めていた人などがいる場合に、相続分を修正して、貢献した相続人が取得する財産の額を増額させ、相続人間の公平を図る制度です。近年では、親の介護のために仕事を辞めざるを得なかったなど、介護をした人が寄与分を主張し、ほかの相続人と対立するケースが増えています。
争っても、実際には家庭裁判所に寄与分を認めてもらうのはかなり大変です。だからといって介護など貢献した相続人に配慮しないのは後々まで禍根を残すことになります。どのような貢献をしたかは見えづらい部分もありますので、介護をしたのであればきちんと記録を残す、介護をしなかった、できなかった側はその貢献を認めて配慮する、といった姿勢を持つことが大切です。
「特別受益」とは、被相続人から遺贈、又は遺産の前渡しと言えるような生前贈与を相続人が受けることです。特別受益を受けた人が相続人の中にいる場合、その人がほかの相続人と同じ割合で相続すると、相続の総額が大きくなって不公平な相続となるため、その受益分を差し引いて相続割合を決定する場合があります。
民法903条において特別受益がある場合の相続分の計算が規定されており、この計算方法に従って相続分を割り引くことでトラブルへの発展を防ぐことが可能です。
寄与分や特別受益をどう取り扱うかによってトラブルに発展するかどうかが変わるため、取り扱いには注意しましょう。遺産相続においてトラブルを防ぐ最も大切なポイントは、被相続人と相続人だけでなく、相続人同士も十分にコミュニケーションを取っておくことです。相続に関する考え方については、日頃から意思を伝えておくとトラブル回避につながります。
日頃から、お互いの考え方や事情を理解していれば、遺産分割の場面でも話し合いがこじれることは少ないでしょう。逆にいえば、相手の考え方などが共有できていないとトラブルに発展しやすくなるため、スムーズな遺産分割をおこなうためにもしっかりとコミュニケーションを取っておくべきです。
(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
遺産分割のよくある疑問
遺産分割についてよくある疑問とその答えをご紹介します。
Q. 連絡が取れない相続人がいる場合、どのように遺産分割を進めるのでしょうか?
法定相続人全員で協議をしなければ遺産分割協議が成立しません。仮に、法定相続人の中で連絡が取れない人がいる場合は、その人の居場所を特定し、遺産分割協議に応じるように説得しましょう。居所のわからない人がいたとしても、専門家(行政書士・司法書士・弁護士など)に依頼すれば住所を調べることは可能です。法定相続人と連絡が取れない場合には、専門家に相談してみてください。
Q. 遺産分割協議が成立した後で遺言書が発見されたらどうなる?
相続においては、遺言書の内容に従って相続するのが原則です。しかし、遺産分割協議成立後に遺言書が発見された場合、相続人全員が遺産分割協議で成立した内容で相続すると合意した場合は、遺産分割協議の内容が優先されます。ただし、一人でも遺言書の内容に反することに反対する相続人がいる場合は、改めて遺言書に沿った再分割をおこなわなければなりません。したがって、遺言書の有無は、協議をおこなう前にしっかりと確認するようにしましょう。
Q. 借金を相続したくない場合は?
遺産相続には、「単純承認」、「限定承認」、「相続放棄」の3つの相続方法があり、借金をすべて承認するか、プラスの財産の範囲でマイナスの財産を相続するか、相続する権利を全て放棄するか、いずれかの方法を取ることが可能です。相続する財産よりも借金の方が多い場合には、相続放棄を検討する必要があります。相続は資産だけでなく負債も相続しなければならないため、被相続人の財産状況は正確に把握して遺産分割に臨むようにしましょう。
このほか、相続に関するよくある質問はこちらから
まとめ
遺産分割は、被相続人が遺言書によって相続に関する意思表示をおこなわなかった場合に進められる手続きです。
今回の記事では
- 遺産分割と相続の違い
- 遺産分割は遺言書を探し、見つからない場合は相続人全員で協議する
- 遺産分割の手続きには「遺産分割協議」「遺産分割調停」「遺産分割審判」がある
- 遺産分割の方法には「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」がある
- 「寄与分」と「特別受益」に注意する
といった内容について解説してきました。
遺産分割では、まず遺産分割協議によって相続人同士の円満な相続を目指しますが、人間関係の対立などで解決が難しい場合には、遺産分割調停を申し立てます。
今回紹介したとおり、遺産分割協議が成立しないと相続手続きが進まないため、遺産分割に臨むためには円滑に協議ができるよう、あらかじめ準備をしておくことが大切です。特に、特別な事情があって、他の相続人に多くの遺産を相続したいと考える場合には、弁護士のサポートを受けて法律による裏付けや正当な主張をおこなう必要があります。
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