共同相続人とは?定義や法定相続人との違いについてわかりやすく説明
相続について調べていると、ややこしい言葉がいくつも出てきます。
「共同相続人」「法定相続人」もその一つ。
この記事では、「共同相続人」「法定相続人」について解説していきます。
目次
共同相続人とは?
共同相続人とは、相続人が複数人いる場合に、遺産分割前の相続財産を共有している状態の相続人のことです。
法定相続人とは?
法定相続人とは、民法の第五編第二章の規定よって相続人となる人のことです。誰が相続人となるかは、民法の第五編第二章(886条~895条)に規定されています。
共同相続人と法定相続人の違い
共同相続人は必ず法定相続人でもありますが、次の相続人は、法定相続人ではありますが共同相続人ではありません。
- 法定相続人が一人しかいない場合のその相続人
- 相続放棄をした相続人
- 遺言によって特定の財産を単独で相続し、それ以外に相続分を持たない相続人
- 遺言によって全財産を取得することとなった相続人
- 遺産分割によって共有状態を脱却し相続財産を単独所有している相続人
共同相続と遺産分割
共同相続人と以下の人は、相続が開始されると、それぞれの持分に応じて遺産を共有します。
- 包括受遺者
- 相続分譲受人
1.包括受遺者
包括受遺者とは、遺贈(遺言者が死後に財産を人に無償で譲与すること)の対象となる財産を特定せずに、積極財産(プラスの財産)も負債などの消極財産(マイナスの財産)も包括的に承継する遺贈(包括遺贈)を受けた人のことです。
2.相続分譲受人
相続分譲受人とは、相続人から、その相続分を譲り受けた人のことです。
相続人は、遺産分割を行う前に、遺産全体に対する共有持分である相続分を、他の共同相続人や共同相続人でない第三者に有償又は無償で譲渡することができます。
遺産を共有している状態のままでは、被相続人名義の預貯金の払い戻すこともできませんし、預貯金以外の遺産についても使い勝手が悪いので、通常は、それぞれの財産について取得する人を決めて、遺産部分割をします。
共同相続人がいる場合の預貯金の相続手続き
銀行等の金融機関に口座名義人が死亡したことを連絡すると、金融機関はその口座を凍結します。
口座を凍結すると、被相続人名義の預貯金を引き出すことができなくなります。
相続人が複数いる場合に、一部の相続人が勝手にお金を引き出すことを予防できます。
そのような事態が想定される場合は、死亡後すぐに金融機関に連絡すべきです。
預金先の金融機関が分からない場合は、財産調査によって明らかにします。
通帳やキャッシュカード、銀行や証券会社からの郵便物などから、預貯金や有価証券を預けている金融機関を調査します。
また、近年ではネット上の銀行に口座等を保有している場合もあり、通帳やキャッシュカードが発行されていない場合もあるので、被相続人のメール等を確認することも大切です。
また、銀行や証券会社で金融商品を保有している場合は、運用報告書等が届いている場合もあるので、確認してみるとよいでしょう。
なお、口座が凍結されると、口座引き落としで決済されていたものも、引き落としされなくなります。
必要に応じて決済方法の変更や利用停止などの手続きを取りましょう。
また、亡くなった方の未払い入院費などがある場合や葬儀費用を、亡くなった方の口座から支払いたい場合でも、口座凍結後は自由に引き出すことできません。
ただし、相続人全員の同意書等の必要書類を揃えれば引き出すことができる場合があります。
金融機関によって必要書類は異なるため、引き出しが必要な場合は、手続き方法を金融機関に確認しましょう。
そして、遺産分割協議が成立したら、遺産分割協議書と共同相続人全員の印鑑登録証明書等の必要書類をもって、金融機関の窓口で相続手続きをします。
なお、預貯金口座の払戻請求権は、銀行の場合は5年で、信用金庫や信用組合の場合は10年で消滅時効にかかってしまいます。
この期間までに遺産分割をしないと、金融機関から時効を援用されてしまい、払戻し請求ができなくなってしまうおそれがあります。
相続手続きは理解の難しい仕組みや制度がたくさんあります。正しく、そして不利益が出ないようにするために、ぜひ専門家に相談してみることをご検討ください。
共同相続人がいる場合の不動産の相続手続き
不動産を相続した場合、名義変更(登記)をしなくても、その不動産に住むことはできますが、登記をしなければ、以下のようなリスクがあるため、早めに登記することをお勧めします。
- 他の相続人の持分を差し押さえられたり、売却されたりするおそれがある
- 不動産の売却・担保設定ができない
- 権利関係が複雑化するおそれがある
- 次の世代に2倍の費用がかかるおそれがある
相続不動産を登記するタイミングには、遺産分割前の共有状態の時と(共同相続登記)、遺産分割後の2段階があります。
共同相続登記はしなくても構いません。
共同相続登記を省略して、被相続人の名義から遺産分割協議の結果その不動産を取得することになった相続人に直接所有権を移転する登記をすることができます。
登記には登録免許税や司法書士報酬(司法書士に依頼する場合)がかかるため、費用を節約したい場合は、共同相続登記を省略するとよいでしょう。
なお相続登記の方法は、「不動産を相続するにはどうしたらいいの?相続登記について解説」を参照してください。
共同相続人の相続放棄と限定承認
相続放棄をした相続人は、その相続に関して初めから相続人ではなかったものとみなされます。
共同相続人が減ると、他の共同相続人の相続分が増える場合があります。
例えば、配偶者と子2人の計3人が共同相続人のケースでは、それぞれの相続分は、配偶者が2分の1、子がそれぞれ4分の1ずつですが、子の1人が相続放棄をすると、配偶者の相続分は2分の1で変わりませんが、相続放棄をしなかった方の子の相続分は2分の1となり、相続分が増えることになります。
なお、相続分には、積極財産だけでは消極財産(相続債務)も含まれるので、相続分が増えることは必ずしも良いことばかりではありません。
なお、限定承認は、共同相続人全員でしなければなりませんが、共同相続人の一人が相続放棄をしても、他の共同相続人で限定承認をすることはできます。
限定承認とは、被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合等に、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ制度です。
また、相続人は、相続が必要な場合に、相続分の譲渡や相続分の放棄によって、相続分を譲渡または放棄する方法もあります。
相続分の譲渡は、前述の通り、相続分を、他の共同相続人や共同相続人でない第三者に有償又は無償で譲渡することです。
相続分の譲渡をすると、積極財産だけでなく、消極財産の相続分も譲渡されますが、これはあくまで譲渡当事者の関係においてのことで、譲渡人は相続分の譲渡をもって債権者に抗弁することはできません。
つまり、譲渡人が、債権者から弁済を求められたときに、「相続分を譲渡したので譲受人に請求してください」といって弁済を拒むことはできないのです。
これに対し、相続分の放棄では、放棄された相続分は、他の法定相続人や包括受遺者が、法定相続分や指定相続分に応じて取得します。
相続分の放棄では、相続債務が放棄者に残ったままになります。
なお、限定承認については「限定承認とは?申し立ての手続き方法やメリット・デメリットをわかりやすく解説」で詳しく説明しています。
共同相続人による時効取得
共同相続人の一人が、共同相続した遺産を、一定期間を占有し続けた場合、取得時効が成立することがあります。
時効取得とは、一定期間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した人が、その所有権を取得することができるという制度です。
取得時効の成立に必要な期間は、占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、10年間で、悪意であるか、または、過失があったときは20年間です。
法律用語としての善意とは、知らなかったことを意味し、悪意とは、知っていたことを意味します。
つまり、取得時効の成立に必要な期間は、占有の開始の時に、他人の物であること知らず、かつ、知らなかったことについて過失がないときは10年間で、他人の物であることを知っていたか、または、知らなかったが知らなかったことについて過失があったときは20年間です。
さて、時効取得が成立するためには、「所有の意思」が必要ですが、遺産を単独で占有している共同相続人は、他の共同相続人の持分については所有の意思をもっていないので、何年間占有しようとも取得時効が成立する余地はありません。
しかし、外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものといえる事情がある場合は、所有の意思があったといえると解されていています。
例えば、その物について単独で贈与を受けたと信じているような場合は、外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものといえる事情があると認められる可能性があると思われます。
ただし、このような特殊事情があることは、時効取得を主張する人が証明しなければならず、そう簡単に認められるものではないと思われます。
また、共同相続による共有者の一人である占有者が亡くなり、二次相続が生じた後にも、二次相続の相続人によって取得時効が完成することがあります。
もっとも、相続による承継は包括承継であり、占有の内容もそのまま承継するので、一次相続の相続人である占有者が、他の共同相続人の持分について所有の意思をもっていなかった(共有だと知っていた)場合は、基本的には、二次相続の相続人である占有者の占有の性質も同様になるため、要件を欠き、取得時効が成立する余地はありません。
しかし、二次相続の相続人である占有者について、外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものといえる事情がある場合には、取得時効が成立する余地が生じます。
例えば、二次相続の相続人である占有者が、一次相続の相続人である占有者が一次相続の被相続人からその物について単独で贈与を受けたと信じていて、かつ、二次相続の相続人自身がその物について現実の占有をしているような場合は、時効取得が成立する余地があると解されています。
取得時効が成立するかどうかは、実際のケースに応じて個別具体的に判断されるので、ご自身のケースで取得時効成立の可能性があるかどうかは、弁護士に一度相談することをお勧めします。
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