株式の相続はどうやるの?株式の調べ方や名義変更の手続き、評価方法までわかりやすく解説
株式を相続したら、その株式の価値はどのように決めればよいのでしょうか。どうやって手続きをすればよいのでしょうか。
株式投資をしていない人が株式を相続したらたくさんの疑問があるでしょう。
この記事では株式の名義変更の方法や、株式を相続する際に相続人がやることや、気を付けたいポイントについてわかりやすく解説します。
相続する株式の調べ方
株式は上場株式か非上場株式かによって評価の方法が異なります。まず株式がどんなものがあるのかを調べます。
株式の調べ方
相続財産の中に上場株式があるかどうかは、次のような書類を手掛かりにして調査します。
- 取引口座を開設した際の控え
- 目論見書
- 取引報告書
- 取引残高報告書(評価報告書)
- 特定口座年間取引報告書
- インターネットの履歴など
このような書類等が自宅内にあるかどうか、被相続人がしまっていそうな引き出しや棚、可能であればパソコンなどを確認します。
取引をしていた証券会社がわかれば、残高証明書を取り寄せて、保有する株式の種類や数を確認します。
証券会社がわからない場合
株式を預けている証券会社がわからない場合には「証券保管振替機構(略称:ほふり)」に問い合わせると、どこの証券会社と取引があるのか開示してもらえます。
証券保管振替機構とは、証券を預かって管理している機関です。開示請求書に必要事項を記入して、以下のような必要書類と合わせて郵送すれば、取引情報が記載された資料を郵送してもらえます。
- 開示請求書
- 法定相続人の本人確認書類
- 相続人の戸籍謄本
- 相続人の戸籍謄本など(被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本類が必要ですが、省略できるケースもありますので証券保管振替機構にご確認ください)
- 被相続人の住所がわかる資料
書類などが見つからない場合
証券会社に口座がなく、書類などが見つからない場合でも、被相続人が保有していた株式の発行会社がわかっている場合は、発行会社の株主名簿管理人に問い合わせることができます。
株主名簿管理人とは、株主名簿の作成や管理を委託されている信託銀行や専門会社で、発行会社にホームページや会社四季報などで調べることができます。株主名簿管理人となっている信託銀行等に問い合わせて、被相続人の特別口座があるかどうかを調べます。
古い株券が見つかった場合
相続財産調査をしている中で、電子化される前の古い紙の株券が見つかる場合もあります。そういった場合も、株券発行会社の株主名簿管理人となっている信託銀行等に確認します。
株主名簿管理人となっている信託銀行等に問い合わせて、被相続人の特別口座があるかどうかを調べましょう。
非上場株式を調べたい場合
非上場株式は証券会社等が管理をするわけではなく、株券発行会社に問い合わせるしかありません。
生前「〇〇に出資している」といった話をしていたかなどを手掛かりに調査します。
株式の評価方法
上場株式と非上場株式では、評価方法が異なります。それぞれの株式の評価方法をご紹介します。
上場株式の評価方法
上場企業の株式の場合は、以下の4つの価額のうち、最も低い価額で評価します。
- 相続があった日の終値
- 相続があった月の終値の平均額
- 相続があった月の前月の終値の平均額
- 相続があった月の前々月の終値の平均額
「相続があった日」というのは、被相続人が亡くなった日のことです。
被相続人が亡くなった日が土日祝日の場合、証券取引所は休みなので、終値を求めることができません。そのため、「1.相続があった日の終値」に関しては、相続発生日にもっとも近い日の終値を求めて、そこから算出します。
株式の銘柄が複数ある場合には、それぞれについて「一番低い価額」を選べます。
非上場株式の評価方法
非上場株式の評価法については、会社の経営権を持つかどうかや会社の規模により、評価方法が異なります。評価方法は、以下の3種類です。
- 純資産価額方式
- 類似業種比準方式
- 配当還元方式
会社の経営権を持っているオーナー自身が所有している株式は、会社の規模により以下の評価方法で評価します。
- 小会社の場合は「純資産価額方式」
- 中会社の場合は「純資産価額方式」と「類似業種比準方式」を併用
- 大会社の場合は「類似業種比準方式」
また、会社の経営権を持っていない株主については、「配当還元方式」で評価します。
非上場株式の評価方法は正確に計算することが難しいので、税理士に相談して計算してもらうことをおすすめします。
準確定申告
被相続人が株式を所有していた場合、配当金を受け取っていたり、取引で譲渡益が生じている可能性もあります。
被相続人がするべきだった確定申告を、相続人が代わっておこなうことを準確定申告といいます。
株式の利益以外にも何らかの所得がある場合は、すべてを合わせて準確定申告をしなければなりません。準確定申告には期限があり、被相続人の死亡を知った日の翌日から4ヵ月以内におこなう必要があります。
株式の名義変更(名義書換)の手続き
株式の相続をする人が決まった際の名義変更の具体的なやり方をご紹介します。
上場株式の名義変更方法
証券会社に連絡を入れる
株式を預けている証券会社に連絡を入れ、名義人である被相続人が死亡したことを知らせます。そして、株式の名義変更をしたい旨を伝えます。
必要書類を揃える
証券会社に確認し、以下のような必要書類を揃えます。また、口座振替の申請書などを書く必要があります。証券会社によって書式が異なるので、それぞれ取り寄せましょう。
- 戸籍謄本
- 住民票や本人確認書類
- 遺産分割協議書
- 遺言書など
相続人の証券口座を用意する
有価証券の場合は、口座そのものの名義変更はできません。そのため、相続人名義の証券口座が必要になります。名義を書き換えた株式を相続人の証券口座に振り替えてもらう形を取ります。証券口座をすでに持っている場合は、次の手順4に進んでください。
証券口座がない場合は新規で開設する必要があります。本人確認書類やマイナンバーカードの写し、証券口座開設のための申込書などを準備して、口座を開設しましょう。
相続人の口座へ被相続人の株式を振り替えてもらう
相続人名義の口座と必要書類が揃ったら、証券会社に申請書を提出して、株式の名義を変更します。株式の名義が被相続人から相続人に変更されたら、相続人の証券口座へと振り替えてもらえます。その後は株式が相続人名義となるので、株式を売却することも可能です。
名義変更が済めば株主宛の通知などもすべて相続人宛に届くようになり、配当金も受け取ることができます。
非上場株式の名義変更方法
非上場株式の相続の場合、基本的には株式の発行会社との間で相続手続きを進めます。会社によっては名義変更の手続きが異なる場合があります。
株式の発行会社に連絡を入れる
株式の発行会社に連絡を入れ、名義人である被相続人が死亡したことを知らせます。そして、株式の名義変更をしたい旨を伝えます。
所定の手続きをとる
名義変更の手続きの進め方や必要書類は、各発行会社によって異なります。
株主名簿管理人を設置している会社の場合には、株主名簿管理人に連絡する必要があります。具体的な手続きについては発行会社の指示に従ってください。
株式を相続する際のよくある疑問
税金は払う?
株式を相続した場合や相続した株式を売った場合は、相続税や譲渡所得税など、税金の申告が必要になるケースがあります。
生前に株の名義変更はできますか?
株式の名義変更は、生前におこなうことも可能です。
ただし、生前の株式の名義変更は、生前贈与の扱いになります。贈与税の年間の基礎控除額を超える場合は、贈与税の申告が必要になります。
まとめ
今回は相続株式の名義変更について紹介しました。
株式を相続する際には、確認すべきポイントや外せない手続きがいろいろあります。株式の評価や相続税の計算は一般の方には難しいので、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
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この記事を書いた人
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