遺産分割協議書の作成、提出時に必要な書類とその入手方法
遺言がないときや、遺言があっても割合だけが指定されているようなときには、遺産分割協議という話し合いを相続人全員でおこないます。遺産分割協議書は、その話し合いについてまとめたものです。遺産分割協議書を有効にするには、いくつかの書類の添付が必要になります。
この記事では、遺産分割協議のために必要な書類やあると遺産協議がスムーズになる書類、遺産分割協議書が必要な相続の手続きとその必要書類などについてご紹介します。
目次
遺産分割協議のために準備する書類
遺産分割協議のために準備する書類には、「遺産分割協議、または遺産分割協議書を有効にするための必要書類」「遺産分割協議をスムーズにするためにあるといい書類」「遺産分割協議で権利を主張するために必要な書類」があります。
遺産分割協議書を有効にするために必要な書類
遺産分割協議書を有効にするための必要書類は、次の4つです。
- 被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本(除籍・改製原戸籍・現戸籍)
- 被相続人の住民票の除票と戸籍の附票(登記簿上の住所と死亡時の住所が異なる場合は、戸籍の附票も必要)
- 相続人全員分の戸籍謄本
- 相続人全員分の印鑑証明書と実印
1.被相続人が生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本(除籍・改製原戸籍・現戸籍)
戸籍は、結婚や本籍地の変更、法律による様式の変更などがあると新しく作られます。相続の手続きでは、被相続人(亡くなった人)に関して、それらの戸籍がすべて必要です。なぜなら、過去に家族が知らない隠し子や養子などがいると、その人も相続人になるからです。
遺産分割協議は「すべての相続人」でおこなう必要があるので、戸籍を確認してそのような人がいないことを証明します。
すべての戸籍を集めるために、戸籍を遡ろうとすると
- 除籍(謄本)
- 改製原戸籍
- 現戸籍
という言葉がでてきます。
「除籍」というのは、ある戸籍に記載されていた人が、結婚や死亡でいなくなり、最終的に誰もいなくなった戸籍のことです。
「改製原戸籍」は、法改正で戸籍の様式が変わったときの変更前の戸籍を指します。明治時代に近代戸籍の制度が確立して以来、幾度となく戸籍の様式は変更されてきました。そのため、区別するために、例えばコンピューター化されたときの書き換え前の戸籍は「平成改製原戸籍」と呼ばれることがあります。
「現戸籍」は言葉の通り、現在の戸籍です。
2.被相続人の住民票の除票と戸籍の附票(登記簿上の住所と死亡時の住所が異なる場合は、戸籍の附票も必要)
「住民票の除票」は、亡くなった人や転出済みの人の住民票のことです。
「戸籍の附表」とは、ある戸籍に記載されている人の住所を記録しているもので、住民票と異なり本籍地で管理されています。また、記録は現在の住所だけでなく、その戸籍が作られてから除籍されるまで(現在の戸籍であれば現在まで)の住所です。
戸籍の附表は、不動産の登記簿上(登記については後述)の住所と現住所が異なるときに必要になります。
3.相続人全員分の戸籍謄本
被相続人と相続人の関係を証明するのに必要なものです。
そのため、被相続人と相続人が同一の戸籍に記載されているときなど、手続きによっては、提出が不要なケースもあります。
4.相続人全員分の印鑑証明書と実印
遺産分割協議書には、すべての相続人が同意したことを示すために、署名・押印(実印)をします。実印の効力は、「印鑑証明書」とセットになって発揮されますので、印鑑証明書の添付も必要です。
遺産分割協議をスムーズにおこなうために用意する書類
遺産分割協議をスムーズにおこなうためには、すべての相続人が被相続人の財産の内容を正確に知ることが大切です。そのためには「財産目録」を作成するといいでしょう。
財産目録では、それぞれの換価(値段の見積もり)や財産の所在が正しいことも重要になります。
そこで財産目録を作成するときに準備したいのが以下のような書類です。
- 口座の残高証明書
- 登記簿謄本
- 固定資産税の課税明細
財産を相続してしまってから、「思っていたのと違う」といったトラブルにならないよう準備をしましょう。
遺産分割協議で権利を主張するために必要な書類
寄与分や特別受益があるときに、遺産分割協議ではそれらによる相続の増額や減額の話し合いもおこないます。特に寄与分は、相続できる金額などが明確に決められているわけではありませんので、揉める可能性もあります。そのようなときには、証拠となる資料などを提示します。
特別受益についても、現金であれば振り込みの額などわかりやすいかと思いますが、不動産の提供などのときには評価額などがわかる書類が必要になります。
このように、状況に応じては、遺産分割協議で権利を主張するために、用意しておいた方が望ましい書類もあります。
寄与分と特別受益
寄与分とは被相続人の事業を無償で手伝っていたり、介護をおこなっていたりしたときにそれらを対して法定相続分とは別に相続額を決め、残りの財産を分配するものです。特別受益は、ある相続人だけ事業資金を援助してもらった、生前贈与があった、というときに法定相続分の通りに相続をすると不公平になることがあるので、この分を相続分に含めて分配することをいいます。
遺言書があるとき
遺言書があるときには、原則として遺言書が優先されるので、遺産分割協議は必要ありません。
しかし、以下のようなケースでは、遺産分割協議をおこないます。
- 遺言書の内容が、法定相続人Aに〇割、法定相続人Bに〇割のように指定されている
- 受遺者及びすべての相続人が同意し、遺言書の内容と異なる相続をしたいとき
遺産分割協議では、それぞれの財産を誰が相続するのかを決定しますので、遺言書の内容が割合で指定されているときには、その通りに相続するときにも、誰が何を相続するのかを話し合わなければなりません。
遺言書によって財産を受け取る人を受遺者といいます。例えば、「長男に全財産を残す」という遺言書があっても、受遺者である長男がほかの相続人と法定相続分の通りに財産を分けたいと考え、すべての相続人が同意をすれば遺産分割協議をおこうことが可能です。
遺贈(遺言書で財産を贈ること)には、「すべて」や「〇割」と指定して財産を贈る「包括遺贈」と「××にあるマンション」のように相続させるものを指定する「特定遺贈」があります。
特定遺贈で財産を贈られる「特定受遺者」が財産を受け取りたくないときには、相続人にそのことを伝えれば可能です。しかし、包括遺贈で財産を贈られる「包括受遺者」が財産を受け取りたくないときには、「遺贈の放棄」の手続きを家庭裁判所でしなければなりません。
遺留分について
遺言書が優先されるが「原則」であるのは、「遺留分」を侵害しているとその通りには遺贈されないことがあるからです。遺留分は、被相続人がすべての財産を第三者に残すような遺言書を残してしまうと、残された相続人が生活に困る可能性があるため、最低限の財産は相続できるように設けられています。例えば相続人が、配偶者と子のときには4分の1ずつです。この遺留分が侵害されたときには、「遺留分侵害額請求権」を行使することができます。以前は原則として現物での返還でしたが、民法・相続法の改正によって金銭で受け取ることができるようになりました。
遺産分割協議や遺産分割協議書の作成に必要な書類の入手方法
遺産分割協議や遺産分割協議書の作成に必要な書類の入手方法をご紹介します。
戸籍関係の書類
戸籍謄本とは、保管されている戸籍の謄本(コピー)という意味です。しかし、現在は一部島しょ部を除いてコンピューター化されました。そのため、コピーではなく、データを出力されたものが交付されるので、「全部事項証明書」と呼ばれています。
相続人の戸籍謄本や被相続人の現戸籍は、本籍地の役所で請求することができます。被相続人の戸籍をすべて集めるときには、現戸籍から遡ります。戸籍謄本には、前の本籍地も書かれていますので、次はその役所に請求するのです。これを繰り返してすべての戸籍を集めます。
遡る中で、自然災害や火災などで戸籍が無くなっているときには、市区町村長による証明書が必要です。ただし、提出先によっては、これだけでは認められないこともあるので、事前に相談してください。
戸籍謄本の請求手数料は、以下の通りです。
- 戸籍謄本(全部事項証明書) 450円
- 改製原戸籍 750円
- 除籍された戸籍の謄本 750円
請求は窓口だけでなく、郵送でも請求ができます。対応している自治体ではコンビニエンスストア等における証明書等の自動交付可能です。
手続きに必要なものは、役所や被相続人との関係で変わることもありますが、一般的に以下のものになります。
- 請求書
- 本人確認書類
- 相続人であることがわかる戸籍謄本などの書類(被相続人の戸籍を請求するとき)
祖父母や父母の直系尊属、子や孫の直系卑属などは、委任状なしで請求可能です。関係性を示す書類は、請求をする役所の戸籍で確認できるときには、必要ないケースもあります。
住民票については、お住いの市区町村、被相続人の住民票の除票は、最後の住所地、それぞれの役所で請求可能です。コンビニ交付に対応している市区町村もあります。手数料は市区町村で異なりますが、200~400円ほどです。
請求には以下のようなものが必要になります。
- 請求書
- 本人確認書類
- 相続人であることがわかる戸籍謄本などの書類(被相続人の住民票の除票のとき)
郵送で請求するときには、戸籍謄本も住民票も一般的に以下のようなものが必要です。
- 請求書
- 本人確認書類のコピー
- 手数料相当の定額小為替
- 切手を貼った返信用封筒
- 相続人であることがわかる戸籍謄本などの書類
定額小為替は、ゆうちょ銀行、または郵便局で購入可能です。被相続人の戸籍を遡って集めるときには、その役所に、古い戸籍と改製原戸籍の2つあるようなこともありますので、多めに手数料を同封すると再度請求する手間を減らせるでしょう。余った定額為替は、戸籍謄本と一緒に返却してもらえます。
印鑑証明書と実印
実印とは、お住いの市区町村に登録している印鑑のことで、遺産分割協議書のほか、家や車の購入など、重要な契約で使用します。そのため、印鑑を登録していない人が印鑑証明書と実印が必要なときには、まず、「印鑑登録」をおこないます。
印鑑登録についての詳細は、印鑑証明書に関する記事を参照してください。
印鑑登録をしていれば、お住いの市区町村の役所で印鑑(登録)証明書を交付してもらえます。手数料は、市区町村によって異なりますが、数十円から数百円です。
手続きに必要なものは
- 請求書
- 印鑑登録証(印鑑登録カード)
の2つです。印鑑証明証は、対応している自治体では、夜間・休日の窓口や自動交付機、コンビニ交付なども可能です。また、「印鑑登録証」を持参すれば、委任状がなくとも本人以外が請求できます。
残高証明書
相続財産に預貯金があるときには、正確な残高を知るために、金融機関への「残高証明」書の請求が必要です。
手続きの方法は、金融機関によって異なりますが、基本的には、被相続人が亡くなったことを連絡してから、必要書類を提出します。
必要書類は以下のようなものです。
- 被相続人の口座の通帳やキャッシュカード
- 被相続人(名義人)が死亡したことがわかる戸籍謄本(全部事項証明書)など
- 被相続人と申請者の関係がわかる書類(戸籍謄本など)
- 申請者の実印と印鑑証明書
- 手数料(金融機関により異なる)
残高証明書を請求するときには、注意点が3つあります。
- 日付は被相続人が亡くなった日(相続発生日)を指定する
- 定期預金は既経過利息も計算してもらう
- 被相続人が亡くなったことを連絡すると口座は凍結される
残高証明書は一般的には申請日の残高証明が発行されますが、相続では、相続人が亡くなった日を指定して発行してもらいましょう。
相続税の申告では、定額預金は既経過利息を元本に上乗せした金額で申告するため、定期預金では「既経過利息(前回利息を受け取った日から相続発生日までの利息)」の計算も依頼します。
なお、被相続人が亡くなったことを金融機関に連絡すると口座が凍結されてしまいます。公共料金などの引落しが被相続人の口座になっているときには、急いで手続きをする必要があります。
登記簿謄本・固定資産税の課税明細
相続財産に不動産があるときには、「登記簿謄本」と「固定資産税の課税明細」も用意します。登記簿謄本もコンピューター化されているため、現在の正式名称は「登記事項証明書」です。
登記簿謄本は最寄りの法務局やオンラインで請求することができます。
手数料は、申請方法で異なります。
- 窓口 600円
- オンライン申請・郵送受取り 500円
- オンライン申請・窓口受取り 480円
登記簿謄本には地番や地積(面積)、抵当権などの情報が記載されています。地番は、普段使用している住所とは異なるケースがあるので注意しましょう。
なお、前回の相続で登記がされていないなど所有者が被相続人以外のケースもあります。遺産分割協議の前に確認してくだい。
固定資産税の課税明細で確認するのは、土地の評価額です。土地の評価方法には様々な方法がありますが、課税明細に記載されている「固定資産税評価額」を参考にすることもできます。固定資産税の課税明細は、不動産の住所地の市区町村から被相続人に送付されています。
財産目録
財産目録は被相続人が作成していないときには、相続人で作成します。また、パソコンで作成しても手書きで作成しても構いません。決められた書式はありませんので、大切なことは、全ての相続財産をもれなくリストアップするということです。
具体的には次のようなものがあります。
- 各口座の口座番号や残高
- 不動産の住所や評価額
- 貴金属・書画骨董
- 自動車
- 有価証券・会員権
- 借金・未払い金
財産の状況があいまいだと、同居の家族が使い込んだのでは?と疑われたり、逆に誰かが勝手に財産を処分したりしてもわからなくなってしまい、トラブルの原因になりますので、速やかに作成し、すべての相続人で共有しましょう。
寄与分と特別受益を証明する書類
寄与分や特別受益をどのように反映させるかは、相続人同士で合意が取れていれば証拠などはいらないのですが、反論されてしまったときには、証拠を提示しなければなりません。
寄与分の証拠は、借金の肩代わりや生活費の負担については、振り込みの記録や領収書などを用意します。被相続人の事業を無償で手伝っていたときには、自分が担当していた取引先や業務の記録、手伝っていた期間の被相続人の確定申告などの記録、といったものを用意しましょう。
介護をしたケースでは、費用に関する記録、介護のために仕事を休んだり、そのために給与が減ったりという記録だけでなく、医師やヘルパーとのやり取りも有効です。
特別受益は、金銭だけでなく、不動産や有価証券の生前贈与、留学や大学以上の学費、同居せずに被相続人名義の家屋に住むなどがあります。ほかの相続人の特別受益を主張するには、
- 領収書や振り込みの履歴
- 被相続人の日記やメール、メモ
- 証券会社の口座の残高証明
- 不動産の登記事項証明書
といったものが利用可能です。不動産などは、最高裁の判例により、相続開始時の評価額で計算します。
遺言書
先にも述べた通り、相続では遺言書が優先されるため、最初に遺言書の有無を確認する必要があります。
遺言書の形式は以下の3つです。
- 自筆証書遺言
- 秘密証書遺言
- 公正証書遺言
このうち、自筆証書遺言と秘密証書遺言は、これまで被相続人自身で保管するしかなかったため、家や貸金庫を探せばみつかりました(遺言執行者が保管していることもあります)。しかし、民法・相続法の改正で、2020年7月10日からは、自筆証書遺言を法務局で保管できるようになったため、家などになかったときには、問い合わせてみましょう。
「公正証書遺言書」は公証役場で保管されています。最寄りの公証役場で問い合わせると、預けられているときには、どこに預けられているかがわかります。
遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議で話し合いがまとまれば、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書に決められた書式はありません。しかし、守られていないとこの後の手続きで使用できない注意点もあります。
- 不動産の住所は登記簿の通りに書く
- 金融機関の口座は、支店名・口座番号も書く
- 相続人全員が署名・押印(実印)する
- 複数枚になるときは割り印(実印)をする
金融機関の口座の残高について書いても書かなくても構いませんが、残高を書くと口座の相続手続きまでに時間がかかったときに、利息の分で残高が変わってしまう可能性もあります。
完成した遺産分割協議書は、印鑑証明書を添付することで効力を発揮します。
相続放棄した人がいるとき
遺産分割協議の過程で、「相続放棄」した人がいるときには、遺産分割協議書に「相続放棄申述受理証明書」を添付します。相続放棄は、3ヵ月の「熟慮期間」の間に申し立てなければいけませんので、誰かが相続放棄をする可能性があるときには、間に合うように遺産協議をしましょう。
遺産分割協議書が必要になる手続き
遺産分割協議書が必要になる手続きには以下のようなものがあります。
- 遺産分割により取得した不動産の登記(相続登記)
- 遺産分割により取得した預貯金の名義変更または払戻し
- 遺産分割により取得した有価証券の名義変更
- 遺産分割により取得した自動車の名義変更
- 遺産分割により取得した遺産にかかる相続税の申告
遺産分割協議に期限はありませんが、上記の手続きの中で、相続税の申告は、10ヵ月の期限があります。申告が必要な場合は、間に合うように遺産分割協議をしてください。期限内に申告をしないとペナルティとして延滞税や加算税の支払いが発生します。
相続税の基礎控除
相続税の基礎控除額は、法定相続人の数で決まります。
計算式は、
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)=基礎控除の金額
です。
また、配偶者が相続人のときにはこれとは別に「配偶者の税額の軽減」によって1億6,000万までは非課税です。ただし、この制度の利用には、別途手続きをする必要があります。
相続登記について
相続登記の手続きは、所有権移転登記です。一般的にいう不動産の名義変更のことで、相続する不動産の住所地を管轄する法務局で手続きをします。
相続登記に必要な書類は以下のようなものです。
- 遺産分割協議書
- 登記申請書
- 固定資産評価証明書
- 相続する不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)
- 被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票と戸籍の附票(登記簿上の住所と死亡時の住所が異なる場合は、戸籍の附票も必要)
- 相続人全員分の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
固定資産評価証明書は、登記の手続きで支払う「登録免許税」の計算に使用します。登録免許税は、不動産の評価額×0.4(相続の場合)です。
固定資産評価証明書は、不動産のある市区町村の役所(23区は東京主税局)に請求します。手数料は役所によって異なりますが、23区では、1件目が400円、2件目以降は100円/件です。
口座の名義変更について
口座の名義変更に必要な書類は、金融機関ごとに異なりますが、主に次のような書類です。
- 遺産分割協議書
- 手続きをする口座の通帳など
- 手続きをする人の印鑑届
- 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
- すべての相続人の戸籍抄本、または戸籍謄本
- すべての相続人の印鑑証明書
- 手続きをする人の実印
口座の名義変更では、相続人の戸籍謄本は、被相続人との関係性を証明するために提出するので、被相続人の戸籍からわかるときには、必要ないこともあります。
名義変更でなく、払戻しのときには、印鑑届は不要です。
法定相続情報一覧図について
法定相続情報一覧図とは、被相続人と法定相続人の関係についての一覧で、法定相続人の住所・氏名・生年月日なども含まれます。法務局で登録し保管されますが、登録と写しの発行は無料で可能です。
法定相続情報一覧図があると、戸籍関係の書類を提出する必要がないため、手続きするものが多いときには登記をして「法定相続情報一覧図の写し」を提出するようにすると、手数料の節約にもなります。
登記には以下の書類が必要です。
- 被相続人の戸籍謄本と除籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本または戸籍抄本
- 申出人の本人確認書類
本人確認書類は、氏名と住所がわかるものであればいいので、運転免許証やマイナンバーカードのほか、住民票でも手続きできます。
遺産分割協議で、専門家に相談した方がいいケース
次のようなケースでは、専門家への依頼も検討してください。
- 戸籍関係の書類集めを依頼したい
- 財産の調査をして欲しい
- 財産目録を作って欲しい
- 寄与分や特別受益の証拠について相談したい
- 相続登記を依頼したい
相続税の申告に関わる相談は税理士、相続登記に関わる相談は司法書士、戸籍関係書類の取得や遺産分割協議書の作成は行政書士、相続人間の調整や話し合いなどは弁護士に依頼するといいでしょう。
遺産分割協議に必要な書類についてよくある疑問
遺産分割協議に必要な書類についてよくある疑問とその答えをご紹介します。
Q:被相続人の本籍地が遠く、窓口に戸籍の請求に行くのが難しいです。どうすればいいですか?
戸籍関係の書類は郵送でも請求できます。1週間から10日かかりますので、余裕をもって請求しましょう。
Q:被相続人の戸籍の一部が災害により焼失しているといわれました。どうすればいいですか?
市区町村長に証明書を発行してもらいます。ただし、提出先によっては、それだけでは受け付けてもらえないこともあるので、事前に相談してください。
Q:相続人の一人が未成年です。実印と印鑑証明書はどうすればいいのでしょうか?
相続人が未成年の場合、遺産分割協議は法定代理人がおこないます。しかし、多くのケースで法定代理人はその親なので、同時に相続人になっているでしょう。このようなときには、家庭裁判所に申し立てて特別代理人を選任してもらいます。遺産分割協議はこの特別代理人が代わりにおこないますので、使用する実印と印鑑証明書も特別代理人のものです。
Q:どうして被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本が必要なのですか?
相続人を確定するためです。過去に家族の知らない隠し子や養子縁組をした子などがいた場合、この子も相続人になります。
Q:異なる手続きで同じ書類が必要なとき、手続きの回数と同じだけ必要ですか?手数料を節約したいです。
戸籍関係の書類や印鑑証明などは原本還付という方法があります。これは、指定された方法でコピーしたものと原本を提出し、原本を返却してもらう方法です。また、戸籍関係の書類については、法定相続情報一覧図の登録をおこなうと無料で発行してもらえます。
Q:兄と2人兄妹です。私だけがずっと父の介護をしていて、費用などの負担もしました。平等に遺産を分割しなければいけないのですか?
寄与分を主張することが可能です。領収書など費用に関する書類などを用意してください。
まとめ
遺産分割協議をする前には、
- 被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本(除籍・改製原戸籍・現戸籍)
- 被相続人の住民票の除票と戸籍の附票
- 相続人全員分の戸籍謄本
- 相続人全員分の印鑑証明書と実印
を準備しましょう。
また、スムーズな遺産分割協議のために財産目録も作成しておくことをおすすめします。
相続人自身で書類を準備したり、財産目録を作成したりするのが難しいときには、専門家に依頼することもできます。
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