行政書士ができる相続手続きとは?司法書士との違いや費用の目安から行政書士選びのポイントまで【行政書士監修】
相続手続きを依頼できる専門家の選択肢として、行政書士が挙げられます。
行政書士は書類作成業務や、申請を代行する許認可申請の専門家。相続にかかわる分野でも相続人の代理としてさまざまな業務をおこない、相続をよりスムーズに、遺族の負担が少なくおこなえるよう、サポートしてくれます。
この記事では、行政書士には具体的にどんな手続きを依頼できるの。混同しがちな司法書士との違いや報酬の相場、行政書士を選ぶポイントなどについてご説明します。
目次
書類作成・許認可申請の専門家「行政書士」
行政書士は「行政書士法」により基づく国家資格者で、 官公署へ提出する書類、権利義務や事実証明に関する書類を作る書類作成業務や、申請を代行する許認可申請の代理を行います。
行政書士の業務範囲は、相続や遺言、自動車の登録、内容証明郵便や公正証書といったの暮らしに役立つ事柄から、会計帳簿などの書類作成、建設業、運輸業、旅館や飲食店等の許認可申請などビジネス関係まで幅広く、作成できる資料は3万種類に及ぶと言われています。
日本行政書士連合会に所属している行政書士は、令和2年4月現在48,639人となっています。地域に密着して仕事をしている方が多く、「身近な街の法律家」と呼ばれています。
行政書士に依頼するメリットとは
こうした行政書士に業務を依頼するメリットとはどんなことがあるのでしょうか?
行政書士に依頼するメリット①幅広い相続業務に対応できる
相続手続きを行政書士に依頼する最大のメリットは、幅広い相続の手続きが可能ということです。
特に個人事業主や中小企業の経営者が亡くなった場合、事業の承継をどうしていくかが大きな課題になります。そして、事業がレストランなどの飲食店、クラブなどの風俗営業、骨董屋さんなどの古物商、産業廃棄物処理業などでは事業継承するには営業許可の変更が必要になります。こうしたとき、頼りになるのが申請業務の専門家である行政書士です。
高齢化社会を迎えた日本では、事業承継は経済の大きな課題として認識され始めています。国も地方自治体もスムーズな事業承継のために様々な補助金等の制度を設けています。こうした相談に応え、申請、受給、最後の精算を伴った会計報告までを一括して引き受けることができるのも、行政書士ならではのメリットといえるでしょう。
行政書士に依頼するメリット②残された配偶者を支えることができる
夫婦のうち一方が亡くなった場合、残された配偶者は数年、あるいは数十年の間配偶者のいない状態で暮らしていくことになる可能性があります。また、その間に認知症になってしまい、次の相続(二次相続)時に遺志を正しく伝えられないといったリスクも考えられます。
後ほど詳しく解説しますが、認知症などに備えた任意成年後見の契約、遺言書の作成などは行政書士の得意分野です。また、行政書士を遺言執行者にしておけば遺言書を忠実に実行してもらえるので、遺志が大切に尊重され、現実のものとなります。
行政書士に依頼するメリット③料金が比較的安い
相続手続きを行政書士に依頼する最大のメリットは、料金が比較的安いということです。
相続手続きは作成する書類が多い上、役所や銀行など手続きをおこなえるのが平日の昼間のみということも多くあります。このような相続に関係する業務を行政書士に代行してもらうことで、平日に休みを取れない方でも、多くの費用をかけることなく手続きを完了することができます。
また、相続関係の書類作成に自信がない場合も行政書士に依頼すると安心です。相続手続きでは初めて見るような書類が多いため、自分で作成すると不備が生じ、再提出が必要となることもあります。書類作成のプロである行政書士に依頼すれば、確実かつスピーディーに相続手続きを行うことが可能です。
行政書士には相続の手続きをまとめて依頼こともできますが、自動車の名義変更や遺産分割協議書の作成など、一部の手続きのみを代理でおこなってもらうことが可能です。このため、自分でできることは自分で行い費用を抑えたいという方にも向いています。
行政書士に依頼できる相続手続きとは
一般的な相続であれば、不動産の名義変更(相続登記)と相続税の納税以外の業務は行政書士に依頼可能です。
具体的にはどんなことを依頼できるのか、相続発生後行うべき順番に従ってご説明します。
行政書士に依頼できる相続手続き①相続人調査
相続の手続きは、まず相続人を確定するところから始めます。
相続人調査では、被相続人(亡くなった人・故人)の死亡時の戸籍資料を取り寄せ、昔の戸籍を順番にたどり、出生までさかのぼって調査します。これは、相続人に漏れがないかを確認するためです。相続人調査をおこなうと、前妻との間に子どもがいたり、過去に認知や養子縁組をしていたなど家族が知らない相続人がいる場合もあります。
遺産分割協議は相続人全員が参加する必要があります。新たな相続人が現れた場合、遺産分割協議を再度行わなくてはいけません。このため、相続が発生したら早い段階で、そして正確な相続人の調査が必要です。
戸籍謄本は本籍地の市町村役場に請求すれば取得可能です。本籍を1度も移動していなければ1つの市役所だけで収集完了となりますが、何度も移動していた場合は、本籍を置いていたすべての市町村で戸籍または除籍謄本を取らなくてはいけません。また、遠方の場合は郵送で取り寄せる必要があります。
行政書士の多くは研修を受けて、戸籍や住民票を職権で請求でいる職務上請求書の交付を受けていますので、代理請求が可能です。任せてしまえば出生から死亡まできちんと収集してもらえます。
さらに、昔の戸籍は手書きで作成されていたため、書いた人の癖などにより読み取りづらいこともあります。経験豊富な行政書士であればこのような際も読み解くことが可能です。相続人調査は相続の基本です。このため、相続人調査をした行政書士は、相続人の範囲等を熟知することになります。相続人調査の依頼のみするのではなく、相続財産の名義変更等の相続手続き業務も併せて依頼した方が利便性が高く、一般的です。
法定相続情報証明制度は、相続登記を始めとする相続手続きをスムーズにおこなえるよう2017年に始まった制度です。
相続人調査で集めた戸籍資料は、被相続人名義の銀行口座からの現金の引き出しや自動車の名義変更など多くの場面で必要となります。被相続人の出生から死亡時までの戸籍の提出が求められますので、住所変更や婚姻などで戸籍が変われば、その戸籍の数だけ戸籍資料が必要になります。何通にも分かれている場合、取り寄せるのには手間も費用もかかります。
預金の解約のため銀行に提出した戸籍資料が戻ってきたら、今度は不動産の名義変更のために法務局に出し、また戻ってきたら次の届出先へと戸籍資料を持ち回りしなければなりません。提出先によっては「発行から6ヵ月以内」などの有効期限を設定している場合もあり、何度も取り寄せる必要が生じることもあります。こうした不便を解消するために誕生したのが法定相続情報証明制度です。
法定相続情報一覧図の写しは無料で交付を受けることができ、束のようになった戸籍謄本等の代わりに、法定相続情報一覧図たった1枚を提出することで手続きが済みます。法定相続情報一覧図は5年間保存され、この間であれば再交付も無料という非常に便利な制度です。
法定相続情報証明制度を利用するには、被相続人の住民票や相続人の戸籍謄本などとあわせて法定相続情報一覧図を作成し、登記所に申し出ます。相続人自身での手続きも可能ですが、古い戸籍を読み取るのは慣れていないと大変な作業ですし、間違いも起こりがちです。そして、ミスが1ヶ所でもあれば、修正しなければなりません。
このように、非常に便利であるものの、実際に申し出て交付を受けるまでにはかなりの作業量になるため、法定相続情報証明制度に慣れた行政書士に相続人調査と合わせて依頼をすると良いでしょう。法定相続情報証明制度の詳細については、法務省のホームページにも説明があります。
行政書士に依頼できる相続手続き②相続財産調査
次に、相続財産を把握する必要があります。
相続財産は、預貯金や不動産・自動車・有価証券などのプラスの財産のほか、債務などのマイナスの財産、生命保険金や死亡保険金などのみなし相続財産も含むなど多岐にわたります。このため、相続人が把握していなかった故人の財産が、後から見つかることもしばしばあります。
大した額はないだろうと相続財産調査を行わなかった結果、実は相続税申告が必要で、後日になって追徴課税されたり、大きな借金があることを知らずに相続財産の一部を使ってしまい、相続放棄や限定承認ができなくなるなどというケースもあります。
加えて、相続放棄も限定承認も被相続人の死亡を知ってから3ヶ月以内にしなければならないという制約があり、見落としは大きな損失につながってしまう可能性があるため、迅速かつ正確な調査が必要になります。
また、被相続人と離れて暮らしていた場合などは、どのような財産があるか見当もつかないこともあります。行政書士は、さまざまな手がかりをもとに関係機関に問い合わせて財産調査を行うため、取引銀行などが分からない場合などでも対応可能です。
行政書士に依頼できる相続手続き③遺産分割協議書の作成
遺言による遺産分割以外の場合は、相続人全員で遺産分割協議を行います。分割方法が決まったら、後日の紛争予防と財産の名義変更及び預貯金の払い戻しなどに使用するため、遺産分割協議の内容を書面にまとめ、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書の書式に決まりはありません。このため、相続人本人が手書きまたはパソコン等で作成した上で協議書に各相続人が登録済みの実印で捺印し、印鑑証明書を添付すれば遺産分割協議書として認められます。しかし、銀行や法務局、税務署などに提出するには、求められる内容を把握したうえで作成する必要があるため、行政書士に作成してもらう方が確実です。
遺産分割協議と遺産分割協議書の作成を同時にする必要はありません。遠方の相続人がいる場合、遺産分割協議で決めた内容を後日文書化して証明・押印する、遺産分割協議証明書の作成という方法もあります。
行政書士に依頼できる相続手続き⑤銀行等預貯金の解約
預金者が亡くなった際、銀行などの金融機関は死亡の事実を知ると同時に故人の口座を凍結します。預金が凍結されると、原則、手続きを取るまでは払い戻しができません。解約手続きには、相続関係が分かる戸籍謄本や相続者全員の印鑑証明などの書類が必要となります。
手続き自体はそう難しくありませんし、郵送で手続きができる金融機関も増えてきましたが、いまだに平日昼間の窓口での手続きを求める金融機関も少なくありません。また、記載ミスや記載漏れがあった場合、窓口での修正が必要になることがあるため、仕事で休めない方などは行政書士に依頼するのが良いかもしれません。
なお、民法の改正によって2019年7月以降は、ひとつの金融機関から最大150万円、相続人ひとりにつき被相続人の預貯金額×3分の1×法定相続分まで、預金を引き出すことが可能になりました。ただし、口座から引き出した額は、その相続人の相続財産から差し引かれます。
行政書士に依頼できる相続手続き⑥相続した自動車の名義変更
相続財産の中に自動車があった場合、相続人がもらい受けて乗るということもありますが、古かったり好みに合わず手放すケースも良くあります。このように、相続後すぐに売却または廃車にする場合であっても名義変更が必要です。
自動車の名義変更は、相続関係が分かる戸籍謄本や相続者全員の印鑑証明、車検証、車庫証明書などを用意して運輸支局で行います。金融機関同様に平日昼間の手続きが必要となりますので、時間が取れないという方は行政書士に依頼してもよいのではないでしょうか。
行政書士に依頼できる相続手続き⑦相続した株式の名義変更
株式の名義変更手続きは、相続する株式が上場株式か非上場株式かによって異なります。上場株式であれば証券会社に連絡し、株式を被相続人の口座から相続人の口座に移します。このため、相続人が証券口座を持っていない場合はまず作る必要があります。
一方、非上場株式の場合は発行元の会社に直接連絡し、株主名簿の書き換えを依頼します。
2009年1月5日以降に保有した上場株式はすべて電子化され、証券保管振替機構および証券会社等に開設された口座においてペーパーレス管理されています。しかし、電子化期限までに手続きが取られなかった株券については、株券発行会社が管理を委託している信託銀行等において特別口座という形で管理されているため、相続した中にそのような株がある場合はより手続きが煩雑になります。このような場合は、特に行政書士に手続きを依頼したほうが良いでしょう。
相続準備で行政書士に依頼できる手続き
ここまでは、相続が起きた後に行政書士に依頼する手続きをご説明してきましたが、相続が起きる前から相談しておきたい手続きもあります。
どんなものがあるか見ていきましょう。
行政書士に依頼できる相続準備手続き①遺言書作成
相続争いになるほどの遺産はないと思っていても、実際は紛争に発展することもあります。家庭裁判所が扱う相続事件のうち、1,000万円以下のケースが1/3近くを占めているとも言われています。
このような相続争いを避ける有効な手段が、遺言書を残すことです。遺言書は、亡くなった人の意志のため、何よりも優先されます。このため、遺言書で遺産の分割方法を指定しておけば、相続争いの原因となる相続人同士の話し合いの余地がなくなり、争いが起きにくくなります。遺言書は主に次の3種類があります。
自筆証書遺言
遺言者が全文手書きして日付及び氏名を記入し、押印して作成します。手軽に作れる一方で、偽造されたり亡くなった後に発見されない恐れがあります。また、内容や様式に不備があると遺言として認められないことがあります。
公正証書遺言
公証役場で証人2名の立会いの元、公証人が関与して作成します。原本が公証役場で保管されるため、偽造や紛失の恐れがありません。
秘密証書遺言
遺言者が署名捺印した書面を封印し、公証人と証人2人に署名押印してもらいます。誰にも内容を知られずに作ることができますが、自筆証書遺言同様内容や様式に不備が生じる可能性があります。作成後は自宅で保管しますが、遺言書が作られた記録が公証役場に残るため、発見される可能性はやや高くなります。
生前の相続対策としては、公正証書遺言が最も確実といわれています。行政書士に依頼すると、遺言内容の希望の聞き取りから戸籍などの書類の収集、公証役場とのやり取りをまでをサポートしてくれます。
また、公正証書遺言以外の遺言書の書き方についても、行政書士に相談すれば不備により無効となるのを防げます。
2019年1月13日から、自筆証書遺言に添付する財産目録をパソコンで作成することが可能となりました。これまでは、財産目録も含めてすべて自筆する必要があったため、たくさんある財産をすべて記載するのは一苦労でした。改正後は、パソコンで作成した目録や通帳のコピーなどの自筆によらない書面の添付が可能となり、作成の負担が軽減されました。
令和2年7月10日からは、自筆証書遺言を法務局で保管可能となります。
これまで自筆証書遺言は主に自宅で保管されていたため、紛失したり誤って捨てられたりする問題や、一部の相続人により書き換えられてしまう恐れもありました。
新制度の創設により、自筆証書遺言の保管を申請すると法務局の遺言保管所に原本が保管されるとともに、画像のデータ化も行われます。これまでのように自宅などで保管するよりも、ずっと確実に遺言書を残すことができます。
また、遺言書が法務省令で定める様式に合っているかチェックもおこなってくれるため、不備により遺言書として認められないということもなくなります。
相続人などから請求があったときは、遺言書の内容や遺言書を預かっている証明書などが提供されます。相続人のうちの誰かが遺言内容の確認などを行うと、他の相続人にも通知されて遺言書の存在を知らせてくれるので、ひとりに抜け駆けされる心配もありません。
さらに、これまで自筆証書遺言は家庭裁判所での検認を受ける必要がありました。検認には数週間かかることもあり、その間相続手続きは止まってしまいます。また、封印された遺言書は検認までは開封することはできません。しかし、法務局で保管した遺言書については検認手続きが不要となるため、すぐに相続手続きを開始することができます。
これまで、遺言を残したくてもすべて手書きは大変だし、かといって公正証書遺言では費用がかかるからとあきらめていた方も、新制度により遺言書を作りやすくなりました。
行政書士は自筆証書遺言についても、文案作成や記入指導、戸籍謄本や不動産登記事項証明書などの書類収集までサポートが可能です。また、遺言の中で行政書士を遺言執行人に指名しておくこともできます。被相続人と相続人は利害関係が生じますが、第三者である行政書士にはその心配がなく、被相続人の遺志を最大限尊重して実現してもらうことができます。
行政書士に依頼できる相続準備手続き②成年後見人
成年後見制度とは、認知症などで判断能力が不十分な方を法律面や生活面で支援する制度です。成年後見人は財産に関するすべての法律行為を、本人に代わって行うことができます。成年後見人には兄弟や子などの親族がなることが多いですが、行政書士などに依頼し、第三者の立場から支援してもらうこともできます。行政書士は申請や契約などの書類作成の専門家であるため、生活保護や各種補助金の申請に慣れています。何件もの成年後見を受任している行政書士も少なくなく、地域密着度が高いため、成年後見人を依頼するには適任です。
判断能力を喪失する前に、自分で後見人を決めておく任意後見制度もあります。認知症になった後の預貯金等の財産管理や、介護施設への入居など不安がある方は、成年後見制度に力を入れている行政書士に相談してみてはいかがでしょうか。成年後見制度について、詳しくは法務省のホームページからご確認ください。
行政書士にできない業務はほかの専門家に依頼
相続手続きのなかには、相続登記や相続税の申告など、行政書士には扱うことのできない業務もあります。また、行政書士は遺産分割をめぐって紛争が起きた際なども、相続人の代理人として交渉を行うことはできません。ここでは、行政書士が担当できない業務を依頼できる専門家をご紹介します。
相続トラブルは「弁護士」
弁護士はあらゆる法律問題を扱うことのできる法曹資格者で、相続人の包括代理人となれる唯一の職業です。このため、弁護士に依頼すればすべての相続手続きをおこなってもらうことが可能です。
特に、相続人の間で相続についての意見が分かれていたり、分割しにくい財産があったりして、最終的には裁判で決着する場面が予想される場合には、最初から弁護士に相談することでスムーズな問題解決につながります。訴訟代理人になることができる弁護士が対応することで、依頼者にとって有利な条件で合意を得られる可能性は高まるでしょう。
しかしそれぞれの弁護士でも得意分野が分かれるため、弁護士なら誰に頼んでも良いというわけではありません。例えば刑事事件ばかりを扱う弁護士でも相続手続き行うことは法律上可能ですが、実際は不慣れなため困難です。
弁護士に相続手続きを依頼する際は、相続を得意とする弁護士を選ぶ必要があります。
一方、一般的に価格は高くなるため、トラブルがなければ、行政書士に依頼したほうが費用は抑えられるでしょう。
不動産の相続登記は「司法書士」
司法書士は行政書士と名前が似ている上、依頼できる業務も共通することが多く混同されがちです。このため、相続手続きをどちらに依頼するか迷う方も多いでしょう。
司法書士と行政書士の最も大きな違いは、司法書士は不動産登記をおこなえますが、行政書士はおこなえず、反対に行政書士は行政手続きの申請をおこなえますが、司法書士はおこなえないという点です。相続財産に不動産があるにもかかわらず行政書士に依頼すると、相続登記は別途司法書士に依頼する必要があり、費用が余計にかかる可能性もあります。
その一方、事業継承のために営業許可の変更などは行政書士はできますが、司法書士はできません。相続財産の内容によって、行政書士に頼むのか、司法書士に頼むかを考えるといいでしょう。行政書士の中には仕事上のパートナーとなる司法書士がいて、ネットワークで相続処理にあたっているというケースも少なくありません。
「いい相続」では、ご状況に応じて適切な専門家をご紹介しています。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。
相続税の申告は「税理士」
相続財産が「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」を超える場合には、相続税の申告が必要となります。行政書士は相続税の申告を行うことはできないため、相続税が発生するケースで行政書士に手続きを依頼した場合、相続者自身で申告するか、別途税理士に依頼する必要があります。
ただし、先述のとおり税理士などの士業とのネットワークを持っている行政書士も少なくありません。よく相談しながら進めると良いでしょう。
相続税は、分割方法によって金額が変わることがあります。このため、相続人が話し合って遺産分割をする場合には、税理士に相談することで相続税を減らせる可能性もあります。
行政書士に相続手続きを依頼する費用の相場は?
行政書士に手続きを依頼する際、気になるのは費用ではないでしょうか。
行政書士などの士業は相続人の皆さんの代理人として手続きを進めるだけですので、費用を抑えたいのであればすべて自分でおこなうのも選択肢のひとつです。しかし、実際に慣れてない人が自分だけで相続に関連する手続きすると、思いのほか時間がかかったり、間違ってしまう可能性もあります。専門家である行政書士に依頼することで手間を掛けずにスムーズに手続きを進めることが可能です。
行政書士に支払う報酬
行政書士の報酬に決まりはなく、依頼する行政書士により差があります。しかし、日本行政書士会連合会が2年に1度、全国的に報酬額調査を行い、法外な設定をおこなっていないかチェックしているため、おおむねの相場というものはあります。報酬額調査の結果は、日本行政書士連合会のこちらのページから確認できます。
2015年度の調査では、
- 相続人及び相続財産の調査:59,230円
- 遺産分割協議書の作成:59,807円
という結果となっています。
また、報酬の料金形態は、必要な業務のみを依頼するタイプと、「相続おまかせパック」のようなセット料金になっているタイプがあります。セットになっている場合は、相続人の数や相続する財産により変わるものの、遺産総額が2,000万円程度までであれば20万~30万円で名義変更手続きまでおこなってもらえることが多いようです。
行政書士の報酬額は、事務所の見やすい場所に掲示することとなっています。また、ホームページ上に料金表を出している行政書士も多くいます。
戸籍の収集や銀行などの手続きを自分で行う時間があるならば、パック料金よりも必要な業務のみ依頼する方が安くつく場合もあります。まずは何を依頼するか決めたうえで、見積もりを出してもらうようにしましょう。また、セット料金にはどのような手続きが含まれるか、また、別料金が発生するのはどんなときなのか、最初にはっきりさせておくことが肝心です。
しかし、想定外のことが起こるのが相続です。相続財産の調査をする中で、予想をしなかった財産が見つかることも少なくありません。1960年当時の定期預金の金利は5%。2020年まで複利で増え続けていたら、10万円が、なんと1,867万円になる計算になります。祖父名義の預金の場合、父の兄弟にも相続権はありますのでなかなか大変です。
また、相続していない先代の山林や田畑が見つかった場合、数次相続になるだけでなく、たくさんの相続人が存在することとなって相続が複雑化し、経費が見積もり以上の金額になることもあります。まるでテレビドラマか映画のようなことが起こるのが相続です。
行政書士の報酬以外にかかる手数料
相続手続きを行政書士に依頼するか相続人本人が行うかにかかわらず、戸籍謄本や住民票の発行手数料などの実費がかかります。
代表的な手数料には次のようなものがあります。
行政書士の報酬以外にかかる手数料
- 戸籍謄本:450円/1通(除籍謄本は750円)
- 住民票及び住民票の除票:200~500円/1通
- 印鑑証明:200~500円/1通
- 自動車名義変更登録印紙:500円/1台
上記以外にも、郵送で取り寄せる際は通信料がかかります。実費の総額は相続人の数などにもよりますが、一般的なケースであれば数千円程度です。
相続手続きで行政書士を選ぶ際のポイント
相続手続きを依頼する際、行政書士をどのように選んだら良いでしょうか。インターネットを使って行政書士を探し、依頼まですることも可能ですが、やはり実際に電話で問い合わせしたり、面談をおこなってから決めるのが良いでしょう。行政書士を選ぶ際のポイントをご紹介します。
行政書士選びのポイント①料金が明確で妥当
行政書士に手続きを依頼する際は、できるだけ費用を抑えたいもの。しかし、相場と比べて安すぎる場合は、別途料金が発生する場合があります。値段だけ見て依頼するのではなく、依頼したい業務がトータルでどのくらいの価格になるかで判断しましょう。
また、予想外のことが起こるのが相続。途中で状況が変わった場合も、あらかじめ明確に教えてくれてから手続きを進めてくれる行政書士であれば、相続手続きが終わってから思いもよらなかった金額を請求される心配がありません。
行政書士選びのポイント②コミュニケーションが取りやすい
相続の手続きは、大切な家族を亡くして間もない時期から始まります。このようなときに頼りになるのが、話しやすい行政書士です。落ち込んでうまく話せないときでもしっかりと話を聞いてくれることで、手続きの漏れなどがなくせます。
このため、話してみて何となくコミュニケーションが取りやすいと感じる行政書士に依頼するのが良いでしょう。また、受任後、専門知識だけで手続きを進めるのではなく、ひとつひとつ確認をしながら進んでくれる行政書士であれば、安心して任せることができます。後から状況が変わったときなどにも伝えやすく、すぐに対応してくれることも大切です。相続は依頼した遺族と、受任した行政書士の二人三脚だからです。
話しやすさの他に、連絡の取りやすさもポイントとなります。
パソコンやインターネットに慣れている人は同じようにメールやSNSで連絡を取ってくれる行政書士が時間の節約になりますし、フィーチャーフォン(ガラケー)を使っているような人は面倒臭がらずに電話や郵便でも連絡をしてくれる行政書士がありがたいと感じるでしょう。連絡方法も自分にあった手段で対応してくれる行政書士を選びましょう。
また、面談や書類の受け渡しのしやすさを考えると、自宅からの距離も重要です。忙しく仕事をしている方や休みが取りにくい方であれば、夜間や休日などに連絡可能かどうかも前もって確認しておくと良いでしょう。
まとめ
行政書士に依頼できる相続手続きや報酬の相場などを解説してきましたが、お分かりいただけましたでしょうか。
相続には必要な手続きが多く、相続人自身ですべて行うのは予想以上に大変です。しかも、想定外のことが起こることも多いもの。書類作成が苦手な方や平日に休みが取れない方などは、行政書士に依頼することで負担を軽減することができます。
いざというときに慌てないよう、前もって信頼できる行政書士を見つけておきましょう。営業の許認可や補助金の申請、成年後見など行政書士の業務は多岐にわたります。思った以上に役に立つのが行政書士です。かかりつけのホームドクターのように、いつでも相談できる行政書士がいれば鬼に金棒。
「いい相続」ではお近くの信頼できる行政書士を無料でお探しできますので、お電話やWebフォームからお気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
相続専門のポータルサイト「いい相続」は、相続でお悩みの方に、全国の税理士・行政書士・司法書士・弁護士など相続に強い、経験豊富な専門家をお引き合わせするサービスです。
「e行政書士」の相続手続に関する役立つ情報は「いい相続」編集スタッフがお届けしています。また「いい相続」では、相続に関連する有資格者の皆様に、監修のご協力をいただいています。
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▶ 監修者紹介 | いい相続
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