死亡届と死亡診断書の完全解説|わかりやすい事例付き【行政書士執筆】
親族が亡くなったら、まずしなければならない手続きは、死亡診断書を取ることです。その後死亡届の提出をおこないます。
葬儀を行うための火葬許可申請やお墓の場所を変えるための改葬許可申請などの葬儀・お墓に関する手続きや、
世帯主の変更の届けや健康保険、銀行での手続きなど様々なことを行わなければなりませんが、すべて死亡届を提出しないとすることができません。
ここでは、親族が亡くなった際にまず行わなければならない死亡届と死亡診断書の提出について紹介していきたいと思います。
この記事はこんな方におすすめ:親族が亡くなった際、まず必要な手続きを知りたい方
- 死亡届を作成し提出することで、相続手続きが始まる
- 死亡届の提出は代理人でも可能だが、作成は親族など戸籍法に定められている者のみ
- 死亡届と一緒に提出する死亡診断書(死体検案書)は通常、死亡届と同じ用紙
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死亡届とは
死亡届とは、そこに記載された者が死亡したことを自治体の役所等に提出する書類です。
死亡届を提出しないと火葬・埋葬ができないだけではなく、その後の相続手続きは行うことができません。
死亡届は市役所、区役所または町村役場や病院などで入手することができます。
誰が提出するの?
死亡届を提出する者は親族などのほか、葬儀社などの代理人でもおこなうことができます。
ただ、死亡届を提出する者と死亡届を作成する者(届出者)は異なり、死亡届の作成は戸籍法に定められている者のみが行うことができます。死亡届の作成は葬儀社などの代理人が行うことはできない点に注意が必要です。
だれが作成できるの?
死亡届を作成することができる戸籍法に定められている者とは、「同居の親族、その他の同居者、家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人及び任意後見受任者」です。
なお、「後見人、補佐人、補助人及び任意後見人」が作成をする場合には、その資格を証明する登記事項証明書、または裁判所の謄本が必要になります。実際には親族や同居人によって死亡届が作成されることが多いかと思います。これらの者によって作成された死亡届を提出する必要があります。
提出期限はある?
死亡届を提出しなければならない期間についても戸籍法に定められています。
国内で死亡した場合には、死亡したことを知った日から7日以内に死亡届を提出することが求められています。
また、国外で死亡した場合には、死亡したことを知った日から3ヵ月以内に死亡届を提出することが求められています。
一般的には死亡した当日か翌日には死亡届を提出しているようです。
どこに提出するの?
死亡届に提出場所についても戸籍法の定めに従って行うことになります。
死亡届の提出場所は、亡くなった人の死亡地もしくは本籍地の市役所、区役所または町村役場、または作成者(届出人)の住所の市役所、区役所または町村役場です。
死亡届に関する相談窓口も提出先と同じ場所に設置されています。
届出窓口は土日祝日も含めて24時間受け付けています。なお、国外で死亡した場合には、滞在国の日本大使館や総領事館、または死亡者の本籍地である市役所、区役所または町村役場に提出します。
死亡届作成の注意点
死亡届を記入し作成する際の注意事項についていくつか紹介します。
まず、「氏名」の欄には死亡者の本籍通りの氏名を記載します。また、死亡者が外国籍であった場合には、「本籍」の欄にその国名のみを記載します。そして、「死亡した者の夫または妻」の欄には「法律婚」をした場合にのみチェックをします。「事実婚」や「内縁」の関係では「夫または妻」としてチェックをすることができません。
「死亡したとき」「死亡したところ」の欄には、これから紹介する「死亡診断書」の記載を転記します。
死亡診断書とは
死亡診断書は本当に死亡届に記載されている者が死亡したのかを証明するための書類です。死亡届を提出する際に、一緒に提出しなければなりませんが、死亡届と同じ用紙になっています。
死亡診断書の提出
死亡診断書は死亡した時の状況によってその作成者が異なります。
病院や家で老衰や病気が原因で亡くなった場合には、死亡を確認した医師が死亡診断書を作成し、病院が発行します。死亡診断書と死亡届は同じ用紙で一対になっているので、発行された死亡診断書にある死亡届の欄に必要事項を記載して提出します。
また、事故や変死、自殺だった場合には警察の監察医によって検死が行われます。この場合には死亡診断書ではなく、「死体検案書」が作成されます。
死亡診断書の提出に際して注意しなければならないことは、死亡診断書をコピーして保存しておくことです。死亡診断書は死亡届の提出以外にも、例えば遺族年金の請求や保険金の請求など、多くの手続きで用いることになりますので、忘れずにコピーをしておきましょう。
死亡届と死亡診断書の事例
ここからは死亡届と死亡診断書に関する事例についてです。
死因やその状況には様々な事例が存在するので、それに当てはまる死亡届や死亡診断書などの提出方法について紹介していきます。
事故で亡くなった場合
死亡者が事故で亡くなった場合には、死亡診断書を提出するのではなく、警察の警察医や医師によって作成される死体検案書を提出します。これは病気などの自然死以外の場合には警察に連絡して警察医による検死(行政解剖)が必要となるからです。
事故死の場合、警察が来るまで現場をそのままの状態にしておかなければならず、その後に解剖を行います。解剖が終わったご遺体は遺族に戻され、この時に警察医から死体検案書を発行してもらいます。この死体検案書と死亡届けを前述した市役所などに提出します。
死亡者が成年後見制度を受けていた場合
死亡者が生前に家庭裁判所によって「後見、補佐、補助」の開始の審判により成年後見制度を受けていた場合には、「後見人、補佐人、補助人、任意後見人及び任意後見受任者」が死亡届の作成者(届出人)となることができます。
この場合には、その資格(死亡者の後見人であること)を証明しなければなりません。そのためには登記事項証明書が必要になります。これを死亡届及び死亡診断書と一緒に該当する市役所などに提出しなければなりません。ただし、死亡者に後見人などが存在する場合でも親族や同居人が作成(届出)することは可能です。
胎児が亡くなってしまった場合
死亡届は生まれてきた人間だけではなく、まだお腹の中にいる胎児が亡くなった場合にも必要になります。
ただ、死亡届が必要になる胎児は妊娠4ヵ月以降の胎児に限られます。妊娠4ヵ月以降の胎児を死産した場合には、死産を確認した医師が助産師に死産証明書または死胎検案書の作成を依頼します。そしてこの書類を死亡届と共に該当する市役所などに提出しなければなりません。この場合の作成者(届出人)は父母となります。また、提出日は通常通り死産から7日以内となっています。
また生後間も無く死亡してしまった場合には、一度出生届を提出してから死亡届を死亡診断書と共に提出することになります。この場合の作成者(届出人)は同居していた親族、その他の同居人など通常の作成者と同じになります。
変死の場合
「変死」とは病死や老衰死ではない、死因がわからないことをいいます。
つまり、病死などで亡くなった場合に医師が死亡診断書を作成できる場合とは異なり、なぜ亡くなったのかということを調査してからでないと死亡診断書や死体検案書を作成できません。この場合、遺族は死体の検死が終了するまで待ち、警察の連絡を受けて遺体を引き取ります。
検死の結果によっては「行政解剖」や「司法解剖」が行われます。犯罪性が疑われる場合でない限り、通常は半日から数日で検死は終了します。その後に死体検案書が作成され死亡届を提出するので、通常の場合には、死後7日以内には死亡届を提出できるでしょう。
この死体検案書についても死亡診断書と同様に、その後の相続手続きで利用する場面があるのでコピーを保存しておくと良いでしょう。
自宅で亡くなった場合
持病を抱えていて自宅で療養をしていた場合や自宅で突然亡くなってしまった場合にはどのような手続きが必要で、どのような点に注意を払う必要があるのかという点について紹介します。
かかりつけ医がいる場合
まず、死亡者にかかりつけ医がいた場合には、まずかかりつけ医に連絡をしましょう。亡くなる24時間以内にかかりつけ医による診察を受けていた場合には、死亡診断書を作成してもらうことができます。また、24時間以内に診察を受けていない場合であっても、自宅に来て診察をしてもらうことで死亡診断書を作成してもらうことができます。
かかりつけ医がいない場合
次に、かかりつけ医がいない場合ですが、この場合には死亡診断書を作成してもらうことはできません。なぜなら死因がわからないからです。この場合には変死や事故死と同様に警察に連絡をして、検死を行ってもらい死体検案書を作成してもらうことになります。
また、警察がはじめに自宅に来る際に同居者に対して事情聴取が行われます。これは事件性があるかどうかを判断するためのものであるので、素直に答えていただけば大丈夫です。
自宅で亡くなった場合に気をつけなければならないことは、「慌てて救急車を呼ばないこと」と「遺体に触らないこと」です。救急車は実は遺体を搬送することができません。ですから蘇生をする可能性がある場合などを除いて、明らかに死亡している状態であれば救急車を呼んでもどうしようもありません。もし救急車を呼んでも救急隊員が警察を呼んで終わってしまいます。
次に注意すべき点である「遺体に触らないこと」は前述した警察の事情聴取と深く関わってきます。警察は事件性があるのかを慎重に調査し判断するため、死体に触れた形跡があると念入りに事情聴取などが行われます。むやみに遺体に触らないように気をつけましょう。
死体の確認ができない場合
最後に、死体の確認ができない事例について紹介します。
水難や火災、その他の災害などによって死亡したことが確実視される場合に、死体の確認ができなくてもその調査をした行政機関によって、死亡地の市町村長に報告をすることで戸籍に死亡の記載をすることができます。これを認定死亡と呼びます。
認定死亡は行政機関による便宜的な制度であるので、生存していることが判明した場合には、もちろん死亡の効力は失います。また、認定死亡によらない場合でも戸籍法の定めによって死亡届を提出することができます。戸籍法にはやむをえない事情によって死亡診断書や死体検案書を取得することができない場合には、死亡したことを証明する書面で代用でき、死亡届にその旨を記載して提出することができます。
この制度によって、死体の確認ができない場合で死亡診断書や死体検案書などがなくとも死亡届を提出することができます。ただ、この事例に該当することはあまり存在せず、通常は医師による死亡診断書や警察による死体検案書と共に死亡届を提出することが必要です。
まとめ
ここまで死亡届と死亡診断書(死体検案書)についての基本知識や様々な事例について紹介してきました。事例に応じてどの書類が必要になるのか、誰が死亡届を作成(届出)することができるのかという点は少し複雑に感じたでしょうか。
死亡届と死亡診断書(死体検案書)の作成及び提出は相続手続きの出発点と言えます。他方で死後7日以内に提出をしなければならないということから、亡くなったばかりの状況で急いで行うことが要求されます。ここから始まる相続手続きを少しでも円滑に行うために、死亡診断書(死体検案書)のコピーをするなどの注意すべき点に気をつけて、死亡届を提出しましょう。
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