【訂正例つき】自筆証書遺言の訂正・書き直し方法。財産目録の訂正の仕方も
自筆証書遺言は誰でも手軽に作成することができる反面、全文を手書きで書かなければならないなど、さまざまなルールがあります。一度作成した自筆証書遺言を訂正する場合も、法律でその方法が定められています。この記事では、自筆証書遺言の加除訂正の仕方についてご説明します。
- 遺言書は、いつでも、何度でも書き直しや訂正ができる
- 自筆証書遺言の訂正は、定められた方法に則っていない場合には効力はない
- 遺言書が複数ある場合、最新の日付のものが優先される
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目次
遺言書の書き直しや訂正はできる?
遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの形式があります。これらの遺言書は書き終えた後も、加筆したり、一部を削除したりと、いつでも、何度でも書き直しや訂正が可能です。
時間の経過とともに、例えば財産の内容や相続人の人数など状況が変わることもありますし、遺言者の気持ちや考えが変化することもあり得ます。
このような場合、遺言者は新たに遺言書を作り直すことができます。また、一部変更や誤字脱字程度であれば、わざわざ遺言書全文を書き直さなくても、訂正したい箇所のみを書き直す(加除訂正)ことも可能です。
自筆証書遺言や秘密証書遺言を訂正する場合は、改ざんを防ぐため訂正方法が法律で定められています(民法968条3項)。
(自筆証書遺言)
民法 第968条3項 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
一方、公正証書遺言を修正したい場合は、新たに書き直すことが一般的です。この時、新たに書く遺言書も公正証書遺言である必要はありません。
自筆証書遺言の訂正方法
自筆証書遺言は訂正の仕方を間違えると効力を失い、訂正した箇所などが無効になる恐れがあります。遺言書の本文だけでなく、財産目録を訂正する際も同様です。
自筆証書遺言書を訂正できるのは遺言者のみ
自筆証書遺言は訂正する際も遺言者が、自筆でおこなう必要があります。
訂正場所を指示
自筆証書遺言の加除・訂正方法については、具体的な訂正方法までは法律でも定められていません。一般的には、訂正箇所に二重線を引き、後述のように二重線を引いた部分(訂正箇所)に押印します。
変更した旨を付記
「第〇条について何字削除(または追加・加入)」など、訂正箇所を示して、変更した旨を付記します。
なお、遺言書を訂正した日付を記す必要はありません。
署名押印
付記した部分に署名し、訂正箇所に印を押します。
この時、押印に用いる印章は、遺言書を作成した時に押印した印章と違うものを使用してもかまいません。
財産目録の訂正
財産目録とは、遺言者(被相続人)の財産を一覧にした目録のことです。
相続する財産が多岐にわたっていたり、相続人が複数いる場合、誰に何を相続させたいのかを明確にするためにも、財産目録は大切です。以前は自筆証書遺言の場合、財産目録も自筆で書く必要がありましたが、民法の改正により2019年1月1日から、財産目録は自筆以外のものも認められることになりました。
自筆証書遺言では、この財産目録の一部を訂正する場合も、遺言書の本文を訂正する場合と同様に訂正箇所を示し、その旨を自筆で付記、署名した上で、訂正箇所に押印します。
財産目録をパソコンで作成していたり、通帳のコピ―などを利用していた場合も、自筆で変更箇所と変更した旨が記載されており、定められた通り署名や押印があれば、訂正した目録そのものが自筆である必要はありません。
法務局で保管している自筆証書遺言の訂正
民法改正によって、2020年7月10日から始まった自筆証書遺言書保管制度を利用して、法務局で保管している自筆証書遺言も内容の訂正は可能です。
この場合、自筆証書遺言の保管の申請を撤回し、遺言書を返還してもらった後に遺言書の内容を訂正、再度保管申請することが推奨されています。
ただし、保管の申請を撤回せずに、新たに作成した遺言書を改めて保管してもらうことも可能です。
加除訂正の方法を間違えた場合
自筆証書遺言の訂正については、定められた方法に則っていない場合には効力はありません。
この場合、訂正した箇所(訂正した内容)が無効になるのか、または訂正箇所にもともと書かれていた内容も無効になるのか、さらにはその遺言書そのものが無効になるのかは、遺言書や訂正の内容にもよるようです。
遺言書は書き直しても良い
遺言書の内容を大幅に変える場合、一部を訂正するより、書き直したほうが早い場合もあります。相続割合を大きく変更する場合など、訂正が多くわかりにくくなるようであれば、全体を書き直しをした方が良いでしょう。
最新の遺言書が効力を持つので、古い遺言書を回収する必要はない
遺言書が複数ある場合、その内容に矛盾がある場合は最新の日付のものを優先することが法律によって定められています(民法1023条1項)。そのため、新たに遺言書を書き直す場合、古い遺言書をわざわざ回収する必要はありません。
ただし、あまりたくさんの遺言書があると、後々、相続人が混乱する可能性もあります。また、抵触しない箇所は以前の遺言書に書かれた内容が有効となるため、必要な個所のみを書き直すか、新たに全文を書き直すかは状況に応じて判断しましょう。
(前の遺言と後の遺言との抵触等)
民法第1023条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
遺言書の種類を変えて書き直すこともできる
遺言書を書き直す際には、遺言書の形式を変更することも可能です。
例えば、公正証書遺言を訂正する場合、公正証書遺言の原本は公証役場に保管されていますので、遺言者がひとりで訂正することはできません。公証人に依頼し補充証書や更生証書を作成してもらうことで部分的に変更することも不可能ではありませんが、遺言書そのものを作り直すのが一般的です。
このような場合、新しい遺言書を公正証書遺言ではなく、自筆証書遺言で作成しても問題はありません。同様に、自筆証書遺言を作成していたものを、公正証書遺言で作成し直すこともできます。
遺言書の形式を変えて書き直した場合も、新しい遺言書が有効となります。
遺言書を書いたら手元にコピーを置いておくべき?
公正証書遺言を作成したり、自筆証書遺言でも法務局で保管する場合、遺言者であれば閲覧は可能ですが、手続きが必要なほか、手数料も発生します。
遺言書の内容や遺言者の考え方にもよりますが、将来遺言書の訂正をおこなう場合にこうした手間を省きたいという場合は、あらかじめ遺言書のコピーを手元に置いておくと便利かもしれません。
ただし、遺言書のコピーが手元にあることで、相続人に遺言書の内容を知られる可能性もあるため、注意は必要です。
まとめ
遺言書は遺言者が生きている間であれば、自由に、何度でも訂正や書き直しができます。しかし、訂正方法にはさまざまな決まりもありますし、何度も書き直すのも労力がかかります。遺言書を最初に作成する際には、あらかじめ専門家に相談しておくことをおすすめします。
いい相続では遺言書の作成をサポートできる専門家もご紹介しています。遺言書の作成を検討する際にはぜひ一度、無料相談をご活用ください。
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この記事を書いた人
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