離婚の公正証書とは?公正証書にする流れやメリット、費用について解説
離婚で作成する離婚協議書は、公証役場に行って公正証書にすることができます。公正証書にしておくことによって、約束が守られなかったとき強制執行させることが可能です。
公正証書にすることによって、実際どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。公正証書にする流れや費用、有効期限や守られなかった場合について詳しく解説します。ぜひ、参考にしてください。
目次
離婚の公正証書とは?
協議離婚をした場合、離婚後の約束ごとを自分たちで決めます。調停離婚のように家庭裁判所で合意事項を文書化されるわけではないので、自分たちで離婚協議書を作成します。
ただし、そのままの離婚協議書は合意内容を記載した証拠にすぎず、約束を破ったとしても履行を強制することができません。
特に養育費など、長年経過していくうちに何らかの理由で支払が滞ることがあります。そういった事態に備えて、離婚協議書を公正証書にしておきます。公正証書であれば、相手の給与や貯金を差し押さえして強制的に支払わせることができます。後々のトラブル回避のため、公正証書を作成しておくことは重要です。
離婚協議書が公正証書でなかった場合、約束が守られなかった際は裁判所の判決が必要です。
離婚協議書を公正証書にするメリット・デメリット
離婚協議書を公正証書にするか検討するときは、念のためメリットとデメリットを踏まえておきましょう。
メリット
信用性が高い
公正証書は公証人が双方の意思を確認し署名・捺印をするため信用性が高くなります。後で「言った」「言わない」などのトラブルを防ぐことができます。
強制執行ができる
離婚協議書を公正証書にしておくことによって、裁判をしなくても直ちに強制執行の手続きに入ることができます。
原本がなくならない
公正証書の原本は、原則として公証役場に20年保管されます。そのため盗難や紛失、改ざんの恐れがありません。
デメリット
作成費用がかかる
公正証書を作成するには、公証人手数料がかかります。手数料は養育費や財産分与などの契約金額に応じて公証役場で計算されます。
養育費のみの契約だと手数料は3万円前後、契約金額が大きくなれば手数料も多くかかります。人によっては高額に感じるかもしれません。
作成の手間がかかる
公正証書の作成のためには、公証役場に行く必要があります。代理人を立てることもできますが委任状が必要です。
相手が公正証書の作成を拒否する可能性がある
支払う側の相手に公正証書の作成を拒否される可能性があります。また作成したくても「公正証書にしなくてもきちんと支払うよ」などと言いくるめられる場合もあります。
公正証書にできなくても、せめて離婚協議書はきちんと作成しておくことが重要です。
強制執行のリスクがある
支払う側にとっては、支払いが滞った際の強制執行は大きなデメリットとなるでしょう。給与を差し押さえられた場合、職場にもバレてしまいます。公正証書を作成された際には、最後まできちんと支払う覚悟をしたほうが良いでしょう。
離婚協議書の公正証書を作成する流れ
公正証書を作成する流れは、大まかに以下の通りです。
- 夫婦間で話し合い
- 離婚公正証書の原案の作成
- 公証役場での事前相談
- 公証役場から届く公正証書案の確認
- 完成日の予約
- 公証役場へ訪問
- 離婚届の提出
夫婦間で話し合い
まずは夫婦間で話し合い、養育費や財産分与、慰謝料などの合意内容を決めましょう。
離婚公正証書の原案の作成
その内容をもとに原案を作成します。
公証役場での事前相談
原案ができたら近くの公証役場で作成を依頼します。電話、メール、FAXでも可能です。
公証人に公正証書の原案を見てもらい、妥当かどうかをチェックしてもらいます。事前相談の段階では、夫婦どちらか一方がいれば問題ありません。
公証役場から届く公正証書案の確認
公証役場からメールまたはFAXで公正証書案が届くので確認します。
完成日の予約
公正証書を完成させるには、双方(もしくは代理人)が公証役場に出向き内容を確認して署名捺印をしなければなりません。
公証役場は平日しか開いていないため、平日で公証人との予定を合わせて予約をします。
公証役場へ訪問
手数料を支払い、公正証書の謄本を受け取ります。送達を希望する場合はその手続きも行います。
離婚届の提出
公正証書が完成したら、役所に行って離婚届を提出します。それが受理されると離婚契約の効力が発生します。
公正証書の完成から離婚届の提出まではあまり間を空けないほうが良いでしょう。
離婚公正証書の作成のための必要書類
- 離婚に関する合意書又は合意した内容の書かれたメモ
- 本人確認のための資料(①、②のいずれか)
①各本人の印鑑登録証明書(公正証書作成の日から3か月以内に発行されたものであること)及び実印
②各本人の顔写真のある公的機関発行の身分証明書(運転免許証・パスポート等)及び認印 - 婚姻関係・親子関係を確認するための戸籍謄本
- 不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明書もしくは納税通知書(財産分与する財産に不動産が含まれている場合)
- 年金分割情報通知書・基礎年金番号のわかる年金手帳(年金分割の合意をした場合)
片方が代理人の場合に追加で必要となるもの
- 公証役場に来られない本人の印鑑登録証明書(公正証書作成の日から3か月以内に発行されたものであること)
- 本人から代理人への委任状(個人の実印を押捺したもの)
- 代理人の本人確認資料
代理人になれる人は、各公証人の判断とされていますが、行政書士や弁護士などは書類作成や法律の専門家として認められることが多いようです。
しかし、親族などは結託して嘘をつくなど信頼性に欠ける場合があり、代理人として認められない場合があります。
離婚に関して揉めておらず、離婚協議書や公正証書の作成を検討している人は行政書士に相談することをおすすめします。
公証人手数料(全国各役場共通)
手数料は、「目的の価額」を基準に、それぞれの手数料を計算します。ただし、以下の注意事項があります。
- 慰謝料及び財産分与については、支払総額を目的価額とします。
- 養育費については、別途、支払総額(ただし支払期間が10年を超える場合には、10年が上限)を目的価額とします。
- 年金分割の取り決めは、別途、目的価額が算定不能として500万円とみなし、11,000円の手数料となります。
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11.000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 17,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 29,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 43,000円+5,000万円ごとに13,000円 |
3億円を超え10億円以下 | 95,000円+5,000万円ごとに11,000円 |
10億円を超える場合 | 249,000円+5,000万円ごとに8,000円 |
公正証書に記載される内容
離婚の公正証書には、一般的に以下のような条項が入ります。
- 離婚への合意
- 親権
- 養育費
- 慰謝料
- 財産分与
- 年金分割
- 面会交流
- 連絡先の通知義務
- 清算条項
- 強制執行承諾約款付公正証書作成への合意
離婚の公正証書に関するよくある質問
離婚の公正証書についての質問をまとめました。
離婚の公正証書は妻だけで作れますか?
申し込み手続きは夫婦の一方だけでも可能ですが、最終的には夫婦双方が公証役場で署名捺印をする必要があります。代理人を立てることも可能です。
顔も合わせたくないという場合は代理人を立てることも可能です。
公正証書の有効期限は?
離婚の公正証書に有効期限はありません。また公正証書の原本は20年公証役場に保管されるため、契約内容が後から変更されるリスクも少ないでしょう。
離婚の公正証書の撤回はできますか?
一度公正証書を作成したら、双方の同意がないと撤回できません。また内容を変更したい場合も双方の同意があれば変更できます。
公正証書を作るのはどのくらいの期間がかかりますか?
公正証書での作成期間は10日前後とされています。また公証役場に行く日がなかなか取れない場合、完成まで時間がかかることがあります。
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この記事を書いた人
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